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【随想】あれこれ考えつつも、まず書いてみようかな、と

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いのちなる 旅するなれば ひとの道 消ゆる知りても こころとは あとに残らむ ことだまの おさなきものの すなほなる 泣きていふやう ことのは響かむ
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記事一覧

【雑感】国の良いとか悪いとか/主権在民という考え

 自由で民主主義であることは重要です。でも、それが住みよい国であることを保証してるわけではありませぬ。良いも悪いも、それは国民一人一人の責任でございますから(主権在民)。  アメリカ第35代大統領ケネディ(John F. Kennedy 1917-1963)の就任演説(1961年1月20日)、かつて英語の教材として使われておりましたが、単なる英語の教材だけでは勿体無いほどの内容がございます。国家として目指したいことは幾つもある。しかし、それは国民一人一人に責任がある、という

【随想】介護の現場は苦しい/消費税は何のため?

 社会福祉法人に勤めている方がいらしゃいます。  身体障害者の施設には、直前まで何の病気もせずに普通の生活をしていたのに、熱中症で倒れ発見されるのが遅くて脳梗塞となり、脳の一部分が壊死してしまって、40代で寝たきりになってしまった人、赤ちゃんの二人目を産んだときに脳出血を起こして、右半身が使えなくなって車椅子に乗り左手だけで子育てをしなければならない30代の人、脳性まひで話せない動けない・・・母親が亡くなった後父親が一人で面倒を見ている10代の人、車の事故による全身打撲で生死

【随想】目標:技術資源国/日本国の在り方考えれば

 かつて日本は「技術立国」と称しておりました。  「科学技術を基盤に、国の存立と発展を目標とする政策が、技術立国」「高い科学技術を維持、発展させて、人類の福祉に貢献」「科学技術のフロンティアを開拓し、それを世界に発信する技術立国こそ、我が国が歩むべき道」<一般社団法人日本機械学会『機械工学事典』>  とされておりました。  今や、その意味を広げ、「技術資源国」を目指し、基礎的な技術を育てることが、この国の在り様(よう)に相応しいと考えております。  「ものを作る」、都市を造る

【随想】「なぜ日本の国力はここまで落ちてしまったのか」/視点にズレ政策に誤り

 「なぜ日本の国力はここまで落ちてしまったのか」  新年、本でウェブでお偉い先生方のお話を幾つか拝読いたしました。まあ、共通している点は国力とは経済力を意識されている御様子、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)が落下の一途を辿っていることを気にされているようでございます。では、どうすれば国力が増すのか、あれこれ挙げられてございますけれども、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、の域を出ておりませぬ。言葉尻を捕らえた論戦とて意味ございませぬよ(情けない)。

【短歌】彩國女の花筏/不思議な詩集

 正月の町を歩いていましたら、「詩集です。よかったら読んでください。」と表紙に千代紙の貼られた手作りの詩集を手渡されたのでございます。  開けてみると詩集というより短歌集でございました。今どき、短歌集とは、たった18首、しかも古文で、何とも不思議な気持ちになりました。   (註、以下短歌の句と句との間を空けてあるのは本記事の著者が読み易くするため勝手にしたものです) 『彩國女(さいこくめ)の花筏(はないかだ)』  いづれの御時の一月(睦月)十九日  吹雪に遭ひて村外れの一軒

【雑感】「やまとことば」/どういう意味?

 世の中には、古典(古文、漢文)を勉強する必要はない、三角函数を勉強して何になる、と豪語される方がいらっしゃるようで、びっくりいたしますが、何にせよ勉強しなくて良いと言い得るほどに十分幸せな方なのでございましょう。  下級武士として生き永らえました末、貧乏性(症)の身に付いておりまする我が身には、世間さまにはどうでも良きことにまだまだ学びたきこと多々ございます。  人間、勉強なるものしておりますと、本来の目的とは違うことに出っ会して思わぬ展開に予想もしなかった収穫を得たり、新

【随想】知られざる『萬葉集』/古代朝鮮語との係わり

 『萬葉集』『古今和歌集』『新古今和歌集』と並べて、それぞれ時代を反映する特徴を持つことから特別に三大和歌集と称されております。この中でも『萬葉集』は異色なものといえるものではございませぬか。  学校で習ったときには。漢字と仮名の混じる表記でしたので、ほかのものとの違和感を感じませんでしたけれども、実際には漢字の音を基にしたとされる萬葉仮名が使われているものでございます。  それに、和歌では常識とされる枕詞、特定の意味を持たず、後に来る言葉の意味を引き立てる役割を果たすと説

【随想】人を評価するとは/人事考課

 学生には試験があるが、社会人には試験がないから楽とか言っているあんぽんたんの学生がいるようです。  学生は一年に前期後期の二回、中学、高校生では一学期二回、二学期二回、三学期一回の定期試験があるだけですよね。社会人は毎日が試験なのですよ。しかも、試験問題は周囲の人から準備の余裕なく出題されるのです。  会社勤めに話を限れば、評価された結果は賞与、昇給、昇格に直結です。昇格試験に受かれば管理職に進めるというものではありません。外資となれば、年俸制ですから、試験の成績が悪い(評

【科学】始まりの元素/水素エネルギー社会へ

 文明が自然との均衡を保つべきところ、自然の自浄作用を超えて文明側に偏り過ぎたために地球温暖化、極小の樹脂(プラスティック)による海洋汚染などの環境問題が生じています。  その均衡を保つために、森林、海洋保護、生態系の回復、樹脂材の回収資源化、代替エネルギーなどの研究が進められています。50年前から始められている水素エネルギーの開発もその一つです。それについて少しだけ(といっても5000字以上になりましたが)掘り起こしておきたいと思います。 §1 求められるものは環境に負担

【随想】猛暑なり 嘆くのみにぞ 進歩なき /水素エネルギー社会へ

  命に危険のある猛暑が続く。夏の平均気温は年々高くなり、今年も平年比で1.76℃高く、1898年統計開始以降最高に<気象庁>。原因は地球規模の温暖化に因る気候変動とされる。   毎年7月になると、アントニオ グテーレス国連事務総長がその危機感を世界の指導者に訴えている。今年も、「分断された世界を結び付けるものが一つあるとすれば、われわれ全員がますます暑さを感じているということだ。地球は一層暑くなり、あらゆる場所が危険になっている」と。<2024.07.26 NHKニュース>

【随想】共生?多様性?/辞書の意味するところ

 社会のあり方として、以前は「共生」という言葉が使われていた。最近では「多様性」という言葉が使われる。たぶん同じ意味で。  しかし、どういう社会を目指すのかが議論されないため、意味が曖昧で無責任な言葉になっている。  辞書に言う、文字通りの意味は、(1)集団の中に異なる特徴、特性のあるものが一緒に存在する状態のことを「多様性」と呼び、(2)損得する関係がある場合、損得は入れ換わることも目に見えないこともあるので、損得を考えず、複数の種類の生物が相互に関係を持ちつつ同じ地域で生

【歴史】想像を超える箸/あまりに簡素であまりに便利 <後編>

日本の箸の歴史  さて、中国の箸がどのようにして日本へ渡ったのでしょうか、実は、これも明確なことは分かっていません。  まず、古代日本の遺跡から出土品を探ります。  縄文時代以前の旧石器時代(紀元前2万9000~1万4000年)の幾つもの遺跡から、イノシシ、シカ、ノウサギなどの肉類、マツ、ハシバミの実、コケモモ、ヤマノイモなど出土、また、藤久保東(ふじくぼひがし)遺跡(埼玉県三芳町)から焼かれた石が出土 <三芳町『広報みよし』1991年6月号>、これは土器がなくても調理で

【歴史】想像を超える箸/あまりに簡素であまりに便利 <前編>

※いろいろ資料を集めましたら、あれもこれも使いたくなりまして、全文が20000字を超えてしまいました。思い切って削除しても13000字となりました。前後二編(「中国の箸の歴史」と「日本の箸の歴史」)に分けて掲載することにいたします。 はじめに  訳の分からぬ外国人観光客が多数遣って参ります時代になりました。  もうかなり前のことになりますけれども、平成26年(西歴2014年)、和食が UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されたかとで一時話題となりま

【随想】戦争は国民がする/NHKスペシャル<戦争特集>を観て思うこと

 NHKは、毎年この時期になると大東亜戦争を題材にしたドラマ、ドキュメンタリーを放送いたしますね。  発掘された資料、生き残った人物への取材、必要な数値データを抽出しての解析、それを基に作られた番組は、残念ながら民間の放送局では作れないものでございましょう。    アーカイブにて戦争に関する5編の「NHKスペシャル」を観ました。  全編を一言で感想を申し上げれば、大東亜戦争とは、冷静な分析がないがしろにされ一部の指導者の実に曖昧な意思決定で戦争が始められ、何度失敗があってもそ