注意力散漫な男
ずっと、ぼーっと生きてきた
僕は恐ろしく注意力散漫だ。これまでの人生、ケアレスミスで苦汁を飲まされてきた。
しかし、試験ではケアレスミスが命取りになると学び、成果物の提出だけに対しては神経質な男が完成した。
つまり、日常生活においては、どうしても注意力散漫なままなのだ。
携帯はよく落し、家の鍵は閉め忘れる。あと、よく電車を乗り過ごす。
そういう性分なのだと悟っているので、早めに家を出たり、二重チェックをしたりともう対策済みである。なので、実はあまり気にしていない。
しかし、どうしても苦手なものがある。それは、自転車の運転だ。
自転車の運転
この問題は、運動神経と注意力が原因であると解釈している。
どうも、自転車の運転だけ苦手で、非常に良く転ぶ。
運動神経が悪いと言われてたら、それまでなのだが、気づいた時には、僕の自転車は勝手に絶対に通れない間を通り抜けようとしてる。
僕は転ぶまでに、「あ〜、転ぶなぁ」と悟っている。なので、実際に転んだ際には、冷静に受け身を取り、「あ〜、転んだなぁ〜」と自分の注意力のなさによって発生した一連の出来事に対して冷静沈着なのだ。
否、転ぶのに慣れてしまっているのだ。
不思議なもので、車の運転は常に緊張しているので、危ない場面に遭遇したことはないし、徒歩でも転ぶことは滅多にない。
自転車の運転だけ、僕の注意力と運動神経の限界値の波長が合致して派手に転ぶのだ。
考えられるもう一つの原因としては、僕は自転車の爽快感が大好きで、テンションが上がり、注意力が欠如していることである。(文章を制作していて、もう21歳だという事実になんとも悲しくなった。)
まぁ、兎にも角にも自転車の運転が苦手なのである。
電柱に激突した。
その日は、スーパーに水を買いに行っていた。自転車で慣れた道を通る。
僕の前に電柱とガードレールが同時に出現した。
間、通り抜けられるかな。流石に通り抜けられるだろう。
そう思った次のコマでは、ハンドルが電柱に激突して転倒していた。
慣性の法則によって僕の身体は前方に勢いよく飛び出した。
僕はハンドルと車輪の結合部に隠部を思い切り強打した。
これまで感じたことのないような痛みだった。僕はすぐに痛みは引くだろうと痛みに耐えながらスーパーに駆け込んだ。
しかし、痛みは一向にひかない。
野菜コーナーを素通りして、生魚コーナーを抜けることには冷や汗が止まらなくなっていた。
僕は空いていたお菓子売り場を見つけ、まるでポテトチップスに尋常なこだわりがあるかのように、しゃがみ込んでパッケージを熟読した。
冷や汗が止まらない。本当に弾が爆ぜたのだ諦めるほどの痛みに加えて、腹直筋下部に筋肉のつりのような症状があった。
僕がお菓子売り場で悶絶していると、ランナー風の男性が声をかけてくれた。
「大丈夫ですか?」
「お○んち○思いっきりぶつけちゃって…」
そのあと事情を事細かくおじさんに説明した。するとおじさんは、たまと内臓を結ぶ管が衝撃で硬直状態にあることを教えてくれた。
そして、早く解さないと大変なことになることも。
そこからの展開はみなさんのご想像の通り。
勝ち力士が土俵の上で、行司から懸賞金を受け取るときのような姿勢で向かい合い、おじさんは右手を手刀にして中央・右・左の順に切り、僕のたまを揉みほぐしてくれた。
僕の痛みは羞恥心と共にゆっくりとなくなっていった。
これからは、気をつけようと思います。
ありがとうおじさん。
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