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遭遇した旧知の人
先週、母の急な入院でバスに乗っていると、途中のバス停から旧知の人が乗ってきた。
バス停に停車する直前、「その人は…」と気になった。乗ってきたその人の顔を見ると、目が合った。
その人は…
四半世紀も前の、学生時代のバイト先でお世話になった人。
消してしまった古いnoteにも書いたことがあると思う、私の価値観というか考え方に、とても良い影響をくださった女性。
時間は経ったが気づけたなら声をかける、とも書いたと思う。
その人は、母にとっても良い関係だった人。私と母の、間くらいの年齢だろうか。
私がリアルに知っていた当時のその人は、とてもおしゃれだった。が、その日は、全くそういう方向ではない服装をしていた。素敵な印象を作れるセンスを持っておきながら、どういう事情かは知らない。
ただ、その服装の変化は、かなり前に母から聞き知っていた。母はその理由も知っているのかもしれない。
その人が、そのバス停を使っていると話していたことも、すぐに思い出した。
その人は、四半世紀も前の価値観からでは、素敵と表現される容姿には遠かった。それでも、スタイルや顔を褒められる多くの女性たちの中にいて、何の引けも取らない素敵さだった人。
学生時代の私は、人の良さや素敵さが、顔や体の形では決まらないことを、目の前で見せてもらえる環境にいた。
年齢も関係ないことは、その人に限らず、素敵な年上の女性が多かったことで理解した。かなり年上の人でも素敵だった。
ボディポジティブなんて考え方は見聞きしなかった頃のこと。私は大きく影響を受けたバイト先だった。
目が合ったその人は、私とは気づかなかった。私の方がかなり変化したので、その人が悪い訳では決してない。
どこか驚いたような感心したような表情だった。それはその人ではなくても、私と目が合ったときに、私がよく見かける表情。
風邪がかなりひどい日で、平熱でも頭がボーッとしていた私は、結局、声をかけられなかった。
私が下りるバス停まで、早ければ1分しかない。
俊敏さが足りなかった。
…転居の多かった私が近所でもないところで知り合いに遭遇する、ということが私の前提にないので、かなり驚いた。
…本当にその人なのかと、少し考えた。
…声をかけると決めて立ち上がりかけたものの。そうか、今の姓を伝えても知らないのか。どの旧姓のときの人だ。と、結婚は一度でも複数の旧姓を持つ私は考えた。
…姓だけでは足りないだろう、あと何て言葉を追加すれば伝わるんだ? そうか。母も知り合いだから「娘」で良いのか。
…と思った辺りで、私が下りるバス停は目前。
これは無理だと諦めた。そもそも、近づくと風邪をうつすのではないか、という躊躇いも私の動きを鈍くしていた。
退院した母に、そんな話をした。その人で間違いないだろうと言っていた。母も何年も見かけていないというのに、私がまたその人に遭遇する機会はあるのだろうか。
私に大きな良い影響をくださった、その人。
「どこか驚いたような感心したような表情」「よく私が見かける」と上に書いたが、年上の人は、あまりその表情をしない。
年下の人の反応でよく見る。
もっと年下の10代くらいになってくると、驚きはなく、興味津々だったり感心していたり。
年上の人は、良い印象に受け取っていそうなときでも、「どうやったらそうなるんだろう」「特殊な人」と考えていそうな表情をすることが多い。
年上の素敵なその人は、素敵に見せる技を、どこかに仕舞い込んでいるらしい。が、その表情を見て、取り繕うことのない姿を、むしろ好もしく感じた。年上でも、良い感度で何かを感じ取ったらしい。
私に良い影響をくださったその人が、私から何を感じ取ったのかは不明だが… 僅かでも恩返しできたなら良いな、と思った。
※ 見出し画像は、お月見らしい演出だった展覧会場での、最近の一枚。