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夜の図書館と物語の味

ずっと前に森瑤子さんの本で知った料理がある。オイルサーディン缶を使った鰯丼で、うちでは始めに母が作り、「これ美味しいわよ」と教えてくれたのをきっかけに私も時々作っている。

昨年、どなたかのブログで原田ひ香さんの「図書館のお夜食」という本を知り、面白そうな題名に興味をそそられネットで調べてみると、目次に「森瑤子の缶詰料理」とあった。「コレは絶対にアレだ!」(会話や独り言の中で「アレ」「コレ」が増えたら要注意だそうです笑)と嬉しい驚きとともに、本をすぐ注文。

森瑤子さんの缶詰料理

本の配送先は実家にして母に最初に読んで貰い、その後我が家に送って貰った。届くのを待つ間、既に読み終えた母とビデオチャットしながら「ねぇ、ソレに出てきた森瑤子さんの缶詰料理ってやっぱりアレだった?」「うん、アレだったわよ」「アレ美味しいもんねぇ」と会話する。

図書館のお夜食

届いた本を早速読んだ。まず、舞台になる図書館は素晴らしく魅力的。図書館というより、本の博物館という感じ。夜開くこの図書館にある本はどれも亡くなった作家の蔵書で、高い会費を払ってくるお客さんは癖のありそうな人たち。従業員たちは皆何かしらの事情を持ち、顔の見えないオーナーに誘われてここにきた。そのオーナーは謎に包まれている…という設定。

この本、カバーが綺麗で中に入り込みたくなる。こんな図書館で働けたら…と想像が膨らむ。そしてカバーを外すと夜空に浮かぶ蝶のような蛾が出てくる。この蛾は物語の鍵となる存在。

「蛾は夜の蝶です」(9頁より)

個人的な感想を言うと、もう少しそれぞれの従業員やお客さんたちについて踏み込んでくれたら良かった。続編があるのかな。あとオーナーの過去はあまりに現実味がなくて夢物語のようだと感じてしまった。

ところで私のイメージではこの本の図書館は、何年か前に行った、駒込駅近くにある東洋文庫ミュージアム。こんな感じじゃないかしら。

東洋文庫ミュージアムのモリソン書庫はため息が出るほど美しい本棚。

図書館内のカフェで出る賄い料理が各章のタイトルになっていて、森瑤子さんの以外のものもどれも美味しそう。しろばんばのカレーは井上靖さんの小説「しろばんば」から。「ままやの人参ご飯」は向田邦子さんが妹さんにやらせていた料理屋のご飯。赤毛のアンシリーズからの「パンとバタときゅうり」も田辺聖子さんの「鰯のたいたんとおからのたいたん」も食べてみたくなる。

小説や作家にちなんだ賄い料理

最後に、森瑤子さんの缶詰料理の作り方を書いておきます。

  1. オイルサーディン缶を油ごとフライパンに入れて焼き付ける。(ほぐさず両面を焼いても、バラバラにほぐしても良し) 油めちゃくちゃはねるから注意。

  2. 醤油を垂らして味付ける。ジュッと美味しい音がする。

  3. 温めたご飯に乗せて、小口切りのネギをパラパラかけて出来上がり。

たっぷりの海苔をちぎってかけたり、お好みで七味や炒りごまを振るのも良し。書いていて今思ったけれど、お茶漬けにしても良いんじゃないかしら。あぁお腹が空いてきた。

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