TMK

大胆不敵になりたい小心者。本と本にまつわることを書いています。アメリカ在住。

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最近の記事

平等なコミュニティの不平等

今日はアメリカの大統領選だ。私はこの25年ほど永住権でアメリカに暮らしており市民権は取っていない。つまり選挙権もない。自分なりの意見はあり家族とは話すが、外では黙っている。 選挙結果が出るまで読書でもしようと久しぶりに「動物農場」を読みかえした。農場で不満を抱えていた動物たちが農場主の人間を追い出して「全ての動物は平等」とのモットーをかがげ、理想的で素晴らしいコミュニティを作る。話がここまでだったらハッピーエンドの絵本にでもなりそう。だけど現実は(といってもフィクションだけ

    • 「赤い小馬」を読んで本の最初の持ち主を想う

      大好きなスタインベックの「赤い小馬」を読んだ。 カリフォルニア州サリナスで牧場を営む厳しい父、カール・ティフリン、優しい母、それから使用人のビリーのもと、馬の成長、誕生や死、人との出会いと別れを見つめ人生の厳しさを知っていく少年ジョーディの話だ。 4つの章に分けられている。最初の「贈り物」では初めて自分の馬を持ったジョーディの興奮が伝わってくる。献身的に世話をするが悲しい結末になってしまう。 「大連峰」の章では牧場に突然男がやってくる。「ここで生まれここに帰ってきた(だか

      • Aaron Beckerの絵だけの絵本

        子供が幼かった頃は絵本を一緒に楽しんだ。頂いたり買ったり、図書館から借りたりした多くの絵本の中には今でも忘れられないものが多くある。 「文字がない」ことで有名な、1974年生まれの絵本作家アーロン・ベッカーさんの本もそのひとつ。絵だけなので翻訳の必要もなく世界中の子どもが楽しめる。ページいっぱいに広がるベッカーさんの絵には、子供だけじゃなく大人も夢中になってしまう。 有名なのは「Journey」「Quest」「Return」の三部作。誰からも相手をしてもらえない孤独な少女

        • 熊のいるホテルとベリー家の物語

          このはちゃめちゃな物語は1939年の夏のアメリカから始まる。ニューハンプシャー州出身の若い2人ウィンスロー・ベリーとメアリーがこの夏、メイン州のリゾートホテルでのアルバイト中に恋に落ち、芸達者な熊を手にいれたあと結婚し、家族となった。ステイト・オ・メインというおかしな名前の熊はアールと改名され、老いてもう芸らしい芸は出来なくなる。ベリー家に生まれた子供たちは多様性に富んでいる。学校で虐められているゲイの長男フランク、奔放で美人な長女フラニー、ずっと小さいままの次女リリー、三男

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          ぱっと開いてぱっと散る

          釣りバカ、野球バカ、親バカ…世の中にはいろいろな「バカ」がありますが、わたしたちが誰かについてそう表現するとき、そこには多少の呆れとたっぷりの愛情が混ざっていると思う。釣りであれ野球であれ我が子の成長であれ、夢中になっても何ら問題がない対象だからかもしれない。子供のように、自分が好きなものに没頭する大人は魅力的だ。 「空に牡丹」に出てくる清助さんはとにかく大の花火道楽で、金に糸目をつけず花火に費やしかつては大地主だった家系を落ちぶらせてしまった。だけどそんな清助さんのことを

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          強いふりとか気軽な旅とか

          朝のウォーキングを日課にしている。近くに遊歩道があるのでよくそこを歩いていた。広々として気持ちの良い道なのだが、途中10メートルほどハイウェイの高架下を通り、そこだけは陰になっていて暗い。ちょっと緊張する10メートルだ。 割と治安が良い地域とはいえここはアメリカ。危険な目に遭いたくない。その薄暗い高架下にもし悪い人が潜んでいたら、小柄で弱々しげなアジア人女性と見られるといいカモになるのは間違いない。 「小柄」と「アジア人女性」というのは変えようが無いので、「弱々しげ」とい

          強いふりとか気軽な旅とか

          東へ!少年たちのロードトリップ

          ここ数年アメリカの都会では治安の悪化が止まらない。誤解のないように書いておくと、安全な場所もまだ多くある。国内や海外からの観光客が集まるような場所は夜でも人通りが多く賑やかで、怖い思いをせずに過ごせるだろう。しかし1ブロック、2ブロックそこから離れると、路上生活者や薬物使用者に占領され、路上には人糞や薬物用の注射針が落ちていたりする。 窃盗、万引き等の犯罪は増え、白昼堂々と大量の商品を店から持ち出す人たちもいる。車は窓ガラスを割られ中のものを盗られる可能性が大きいので駐車し

          東へ!少年たちのロードトリップ

          ハツカネズミと人間

          舞台は1930年代、 大恐慌時代のカリフォルニア州。子供のような心を持つ大男レニーは知的ハンデを持っている。ふわふわの柔らかい生き物が好きで、小さなネズミをポケットに持ち歩くのも指で撫でていられるから。いつの日かウサギを飼って存分に撫でるのを夢見ている。欠点は力が強すぎ自制が効かないこと。 レニーと一緒にいるのはジョージという男。レニーに呆れ、文句を言いながらもその失敗をカバーし見守ってきた。共に農場を渡り歩きながらジョージはレニーに素敵な将来の計画を聞かせる。レニーはその

          ハツカネズミと人間

          潜む「獣」 - 蝿の王

          大戦の中、南太平洋の無人島に不時着したイギリス人の少年たちの物語「蝿の王」を読んだ。きっかけは息子が学校の授業で読み、これは面白いから読むべきだと私に薦めてきた事。ぶっきらぼうなティーンになってしまった子供と何とか共通の話題や接点を持ちたい母としては、薦められたらそりゃすぐ読みます。 無人島、しかも大人のいない環境で登場人物の少年たちは多数決により隊長を決め、必要に応じて会議を開き、発言権を守るルールまで決めた。まだ小中学生(中にはもっと小さな子も)という年齢なのに、規律を

          潜む「獣」 - 蝿の王

          「今日こどもたちと喋ったよ」

          今は高校生の私の息子は幼い頃とてもシャイで引っ込み思案だった。シャイになる対象は子供限定だ。大人にはすぐ懐くのに、他の子達が近づくとさーっとその場を退いてしまう。公園では他の子供達が遊んでいる付近に近寄れない。遊ばないのかと聞くと「だってこどもたちがいるから...」。自分だって子供なのにね。 プリスクール時代は先生方から「彼はなかなかお友達たちと喋らず、話かけれらると下を向いて黙ったまま」と言われ続けた。帰りがけに他の子達から声をかけられてもやっぱり黙って下を向いてしまい、

          「今日こどもたちと喋ったよ」

          日本のアンデルセン、小川未明童話集

          小学校の何年生の時だったか、風邪で学校を休んだ日のことだ。とにかく学校が好きだった私は「学校に行けない=損をしている」としか思えず、その時間みんなが学校で体験しているであろう楽しいことを想像し、置いてきぼりになっている自分が可哀想だと感じていた。つまらなそうな顔でもしていたのかもしれない。そんな私に「本でも読んだら?」と母が渡してきたのが「小川未明童話集」だった。 「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれた小川未明、私はそれまで「赤いロウソクと人魚」くらいしか知ら

          日本のアンデルセン、小川未明童話集

          クリスマスが喜ぶね

          毎年、秋の終わりごろ街のあちこちでクリスマスツリーが売られ始める。生の木だ。クリスマスツリーファームと呼ばれる、クリスマスツリーを栽培している農場から切られて運ばれてきたものたち。人々はそこで自分の家に飾るのにちょうどいいサイズで、なおかつバランス良く葉が茂っているものを選んで購入し、ツリーをネットで包んで車の屋根にくくりつけて家に持ち帰る。直接、農場に行って自分でノコギリで切って買うという方法もある。大きなツリーを乗せて走る車を見るのはこの時期の風物詩だ。 家に持ち帰った

          クリスマスが喜ぶね

          単純さと荒っぽさと優しさと

          「男同士には暗黙の了解がいくつかある」。ここアメリカで高校に通う息子が先日そう教えてくれた。 「まず友達編。悪口は面と向かって本人に言う。本人のいないところでは決して言わない」。つまり「お前バカだな」と本人に言い、本人のいないところで「あいつバカだよな」とは言わないそうだ。 へー。なかなかいいんじゃない。他には?と聞いてみた。 「トイレ編。連れ立たず1人で行く。小便器で用を足している最中、視線はまっすぐ前のままキープ。学校のトイレで友達とばったり会っても気づかないフリ」

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          絵と写真とコラージュで楽しむバリ島

          もう15年以上前のこと。夫と2人で行ったバリ島で、夫が急な不調に見舞われた。ホテルのフロントで教えてもらった敷地内の診療所に行くと、その前で若い従業員が箒を持って落ち葉を掃除している。ドクターに診てもらいたい旨を伝えると、その彼は微笑んで頷き、ちょっと待っていてと言って診療所の中に入っていった。しばらくして「用意ができました」とドアを開けてくれたのはドクター用の白衣を羽織ったその彼だった。お医者さまご本人だったのか! 絵とメモと写真とコラージュ、隅々まで目が楽しめる「バナナ

          絵と写真とコラージュで楽しむバリ島

          「1984年」は手引書じゃないんだよ

          このところ、アメリカでHypocrite(偽善者)という言葉をよく目や耳にする。 多様性を認めることの大切さを謳いながら、異なる意見は糾弾する。 自由の国と自負しながら、SNSで個人の意見が検閲される。 事実のみを伝え受け取り方は国民に委ねるべきニュースメディアが政治的に偏っていて、自分たちに都合の良いことしか報道しない。そんなところが偽善的だと言っているのだと思う。 そんな現代社会を皮肉ったジョークが書かれているTシャツが売られているのを見た。『1984 Was Not

          「1984年」は手引書じゃないんだよ

          色鮮やかな世界-PRIVATE WORLD-

          今年は我慢の年。憎きウイルスのせいでどこにも行けない...何も楽しいこと出来ないよなぁ...とフラストレーションを溜めている人、きっと世界中にいっぱいいるよね。 旅行に行くのだけでなく、逆に日本に帰国するのも難しい状況の中、ペルーに取り残された日本人男性に関する報道は記憶に新しい。封鎖で足止めされたその地で子供たちにボクシングを教えながら約200日間を過ごし、後にペルー政府から特別許可が下りマチュピチュの遺跡を案内してもらっている。 ボクシングを教えながら滞在、というのが

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