好きとか嫌いとか、どうでもいいとか。
秋の空を見ると、そこに文字を書きたくなる。
おいしい焼き芋を食べたいとか、
あざとい女になりたいとか、
毎日ケーキを食べたいとか、
目覚ましをかけずに寝たいとか、
欲望をそのままに。
カバの蒲焼とか、
アイスコーヒーのホットとか、
まぐろの踊り食いとか、
意味を持たない言葉たちを。
今日も文字を書きたくなるような空だなぁと思いながら歩く。
いま、私の頭の中にあることといえば、空の様子と晩御飯の献立くらいだ。世の中のことは大概、どうだっていい。
世間から切り離されてしまわないように、一応テレビをつけてニュースを流しておく。
だけど、やっぱり世の中の大概はどうだっていいのだ。
疲れた日には味の濃いものを食べて、
悲しい日には一汁三菜揃ったご飯を食べる。
そうしておけば世の中のことなんて大概、どうでもよくなってしまう。
努力は必ず報われるとか、
生きるために働くとか、
初恋は叶わないとか、
あいつの方がいい大学に行ったとか、
愛は時間がかかるとか、
タピオカ屋さんが潰れたとか、
努力は報われないとか、
好きだけじゃどうにもならないとか、
湿気で髪がまとまらないとか、
好きな人の好きな人とか、
元恋人はいつまで連絡してくるのかとか、
働くために生きるとか、
次の総理大臣はだれか、は大切だけど、
都合のいい女になってはいけないとか、
あの子の方がおっぱいが大きいとか、
目の前のおじさんの名前とか、
あのアイドルは整形だとか、
まぁそんなことは大概どうでもよくって、
そんなことよりも
ラーメンが好きとか、
冬が好きとか、
アイスクリームは美味しいとか、
大人数が嫌いとか、
象が好きとか、
満員電車は嫌いとか、
水族館が好きとか、
狭いところは嫌いとか、
暑いのが嫌いとか、
キリンが好きとか、
そんなことの方がよっぽど大切だ。
空が綺麗とか、
あのラーメン屋はいいとか、
鰤のおいしい季節だとか、
くじらみたいな雲があるとか、
好きな人と散歩したとか、
来週はぐっと冷え込むらしいとか、
緑色の服を買ったとか、
今日の電車は空いていたとか、
いい本に出会ったとか、
そんなことで構成される世界は結構心地いい。
好きとか嫌いとか、どうでもいいとか。
世界から切り離されてしまわないように、
ニュースをつけながら。
あれは好き、これは嫌い、
そのほかはどうだっていい。
そうやって世界を選んで生きていくのだ。
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