私に似合う服③


濡れ衣はもう着せられなくなった。だけど、わたしに1番似合うのは濡れ衣であることを知っている。

本当は可愛い服を着たかったけれど、私は諦めてしまった。「女の子の服は着たくない」と宣言してしまった手前、お母さんに「やっぱり可愛い服を買ってほしい」なんて言えなかった。我が家は先祖をたどっても百姓の家系なのに、お母さんはいつだって「武士に二言はない」と言っていたから、私はその家訓に従うしかなかった。もしかしたら私は武士なのかもしれない。


小学校卒業と共に終わりを告げた2年間のいじめられっ子生活だったが、その習慣はなかなか抜けなかった。いじめっ子はいないのに、私はいつまでもいじめられっ子のままだった。


いじめられてはならぬと、私はより一層勝ち気な女の子になっていた。虚勢を張るしかなかった。強く見せればいじめられないと思った。

本当は濡れ衣が似合うくせに、棘のある言葉と、捲し立てる論理を身に纏った。私に似合うのは濡れ衣だと知りながら。トゲトゲの服を着た。

この時に可愛い服を着られていたらよかったのかもしれない。私は可愛い服を着ることも、着たいと言うこともできなかった。

トゲトゲの服は誰も似合ってるとも、似合っていないとも言ってくれなかった。

無意味に人を傷つけてしまったのかもしれない。誰かを傷つけてしまうくらいなら、やっぱり私にお似合いの濡れ衣を着ておくほうが良かったのかもしれないと、未だに思う。


それでも心をしゃんとするためには虚勢を張るしかなかった。


本当は濡れ衣が似合うことは知っていた。


(つづく)


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