私に似合う服⑤


あんなに着たかった可愛い服だったけれど、もう興味はなくなってしまった。


お母さんも、もう私に可愛い服を着せようなんて気はさっぱりないと思う。お兄ちゃんはメキメキとかっこよくなっていった。

もう可愛い服に興味を持てなかった私は、嫉妬心すら湧かなかった。

だって濡れ衣が似合うんだから。濡れ衣がよく似合う私に、可愛い服が似合うはずなんてないんだから。

ダサいくらいが心地よかったとは言ったけれど、いざ「ダサい」と言われると心はミゾミゾした。だけど、誰かと被って怒られるよりはマシだった。

好きな男の子に「お前の私服ダサいな」と笑われた時は流石に傷つくかと思ったけれど、それでも誰かの真似になって怒られるよりは数倍マシだった。

ダサいと笑われるくらいでちょうどよかった。


濡れ衣は脱いで、ダサい服を着ることにした。

濡れ衣が似合う女の子をやめて、ダサい女の子になることにした。

それが本望だと、そう思うことにした。


私はダサい服を着たかった。



そんな私に事件が起きた。

(つづく)

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