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デパコス売り場の敷居は高かった。それでもBAさんの姿勢は、私に合わせてくれていた。

デパコスのデの字ぐらいしか知らなかった頃、都心部に頻繁に通っていた時期があり、母に百貨店のデパコスコーナーにおつかいを頼まれたことがあった。

当時はまだ二十歳にすらなってなかった頃だから百貨店なんて行き慣れてなくて、めちゃくちゃ緊張しながら百貨店のコスメフロアに入り、化粧品の匂いとBAさんの笑顔にドギマギしながら目的のお店に向かったのを覚えている。


おつかいを頼まれた先は、子供の私でもわかるほど誰もが聞いたことがある有名ブランドで、化粧すらまともにできていない私は怖気付きながらもBAさんに話しかけた。


「あの、こちらの商品が欲しいんですけど」と、スマホで写真を見せながら話しかけると、にこやかにカウンターに併設された椅子に腰掛けるよう促し、「少々お待ちください」と商品を用意し始めるBAさん。その間私の心臓はバクバクと早鐘を打ち、冷や汗も出ていた。


こんなろくに化粧もできない子供が、と内心思われているんだろうな、と嫌な思考が頭を埋め尽くしていく。それでも、BAさんの所作は変わらず、数分後には丁寧に包まれたおつかいの品が私の目の前にあった。

居た堪れなくなった私はお会計をしながら、「実は母のおつかいで」と口走る。BAさんは顔を綻ばせながら、「そうだったんですね!」と相槌を打つ。「では、よければお客様もお試しください」と追加で試供品を一緒に包んでくれた。


大人になった今となると、それが百貨店の店員として当たり前の対応で、それが嫌味だった可能性も十分にあると思えるけど、少なくとも子供の私に対して大人と同じように丁寧に接客してくれたことは好印象に繋がった。いつか、自分のコスメも買おう。そう思えた出来事だった。


営業をやっていた時に気づいたけれど、ホテルとか商社とか、プライベートでこちらが客になる可能性のある企業は、契約につながらなくてもとても丁寧に接してくれた。それは私がプライベートの自分になった時に、「あの会社は丁寧に対応してくれた」という好印象が残っているから、選択肢に残りやすくなるわけで。

うまい営業方法だな、と思うからこそ、昨今目にしたコスメブランドの対応は多方面で残念だな、と思う。


もちろん、韓国コスメやプチプラコスメの参入でデパコスが売れなくなってきていて、BAさんのノルマもキツく大変なのかもしれない。(もちろん、韓国コスメやプチプラコスメが悪いわけではなく)

それでも、「次につながる対応」をしておくことでブランドの印象は変わるし、今購入に至らなくても将来的な顧客になることを見越して対応した方が、お互い気持ちよく終われるのではないかな、と思う。


その時の詳しい状況がわからないのでどちらが悪い、とは断言できない。BAさんにはノルマもあるだろうし、その人の対応をしていなければ購入意欲のある他のお客さんの接客ができたかもしれないから、「買わないなら試さないで」という気持ちもわからないわけでもないから。

でも、購入者側からすると試させてもらえないのは違う、というのもわかる。実際にメイクしてみないとコスメの良し悪しはわからない、というのも事実だからだ。(実際にわたしは何度もコスメを失敗している)
あと、単純に試してみて気に入らなかった、というケースもあるだろうし。


これだけは確信して言えるが、タダでメイクしてもらえる!という頭でやってもらうのは傲慢で違うと思う。多分、あの投稿をした人はそんな意図でお試ししたかったということはないと思いたいけど。(燃やす目的だったら横転すぎる)


デパコス関連の話題でふと思い出したので書いてみた。1000文字超えちゃったので、Twitterではなくnoteにて。

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