安易な精神薬の処方が、認知症の悪化の原因になるんじゃないのか?
リハビリの仕事の関係上、高齢の入院患者さんと接することが多くあります。そして悲しいことに入院中に認知症が悪化してしまうというケースも多々経験しています。その原因の全部とは言いませんが、向精神薬の影響があると思っています。
今日はそんなもやっとしたことのお話。
安易に処方される向精神薬の問題
ちょっと論文関係を調べると、やっぱり高齢の認知症患者に対する向精神薬の処方っての非常に一般的なんですってね。これは国内外問わないようです。
また認知症の患者さんに対しての薬物治療のリスクについても様々な論文で触れています。
認知症の方に対してできる非薬物療法ってなに?
じゃあ入院中の認知症の患者さんに対してできる非薬物療法ってなんなのか?って考えると以下のようなものがあげられます。
環境の調整
まずなによりも先にその患者さんの居室の環境を整えることかと。例えば、適切な照明なのか、静かな環境なのあ、過剰な刺激を避ける方法はないのかなど模索する必要があります。ただでさえ入院生活なんてストレスなんですから、不穏の原因になるんです。できるだけそのなかでも居心地の良い空間や、個々の患者に合わせた生活リズムを維持する環境づくりをする必要があるんです。
コミュニケーションの工夫
あと闇雲に圧迫的に注意する、声を荒げる、正論を振りかざすなんて全くもって悪化するようなコミュニケーションをとるスタッフが多い気がします。正直そういうスタッフに限って不勉強なケースが多いです。患者さんとのコミュニケーションを改善することは、不安や混乱を減らすのに役立つんです。なにも特別なテクニックなんて必要ないんです。ゆっくりとした口調で話す、明確で簡単な指示を出す、身体接触を伴う安心感の提供などごく当たり前にできる方法が効果的なんだと思うんです。認知症の患者さんが理解しやすい方法で情報を伝えるってことも重要でしょうね。
活動の導入
OTとしてはここも重要視したいところ。患者さんに適切な活動を提供することで、エネルギーを発散させ、不穏状態を予防することになるのかと。でもただ提供して暇つぶし…ではなく、役割を持たせ、自己受容感、自己重要感を満たすことにつながるような導入が必要かと。その手段が折り紙だろうが塗り絵だろうが籐細工だろうがなんでもいいんです。なんの目的で、どんな効果を期待するのか?のイメージをもってOTが導入できるかでしょうね。
家族との協力
認知症の患者さんとかかわっていると、家族の面会の時にしっかりされることって多いような気もします。やっぱり他人であるスタッフにはできない部分です。だからこそ、その家族の協力も必要なのかなと。家族と連携して、患者の過去の好みや習慣に基づいたケアプランを作成することも有効だなと思います。
スタッフ教育
もうね、これすごい重要。病棟スタッフが非薬物的アプローチを理解していないからすぐに医師に処方を依頼するし、たいして診察もせず状況も把握していない医師に限って安易に精神薬を処方する。病棟スタッフも医師もきちんと勉強しないといけません。認知症の患者さんの不穏=薬物療法ではなく、まずは非薬物療法で対応できるように。これには、デエスカレーション技術(状況を落ち着かせる方法)の習得や、患者の行動を予測して対応するスキルの向上が含まれるでしょうね。
薬物療法はあくまで補完的な役割で
そうなると、認知症患者さんの不穏といった行動障害に対しては、まず非薬物療法で対応してみること。そのうえで補完的に薬物を使うって流れならまだ納得できます。まず薬ってのは順番が逆だということです。
まとめ
こうなるとセラピストって無力だなって思います。医師にも看護師にもきちんと適切な処置を理解してもらえるようにこちらから働きかける必要がありますし、教育する機会も必要です。まずは自分がしっかりと勉強し力をつけないといけないんだなって思った今日この頃です。
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