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人のために時間を使うと時間の余裕が手に入る

自分ではなく,人のために時間を使うことで時間の余裕が生まれるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。

時間の感覚について調べた研究を見てみると,心理的時間は客観的な時計の時間とは違い,感情や内的な状態などで(遅くなったり早くなったり)変化することが分かっています。具体的な研究の結果の例を挙げると以下のようなものがあります。

・時間の見積もりの正確さは時計を見る頻度で変わる(2
・スマホなどのデバイスは脳の処理速度を速める効果があり,時間が早く過ぎた感覚を引き起こす(3
・締め切りを設定しても先延ばしは克服できない(4
・帰り道は行き道よりも短く感じる(往復効果,5

今回紹介する論文は人のために時間を使うことで時間の余裕が生まれることを教えてくれます。

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2012年にペンシルベニア大学のカギィー・モジルナーらがあえて他人のために時間を使うことで時間の余裕ができるのかについて調べるために実験を行いました。

実験の対象となったのは大人150名でした。

実験参加者はランダムに2つのグループに分けられ,それぞれ割り当てられたタスクをこなしてもらいました。その2つのグループには,以下のような違いがありました。

<グループ1>
他人のために何かする

<グループ2>
自分のために何かする

その日の終わりに,将来の時間感覚に関する質問紙に回答してもらい,グループ間によって時間の余裕があるなしの感覚に違いがあるのかを調べました。

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実験の結果,他人のために時間を使った場合には,自分のために時間を使った場合と比較して将来の時間に関して余裕があると感じていました。また,投資した時間の長短(10,30分)に関わらず,他人のために時間を使ったときの時間の余裕が出来る感覚の効果がありました。

他の実験でも同様の効果が確認されています。具体的には病気の子どもに対して手紙を書くことに時間を使った場合の方がただ時間をつぶした場合と比較して将来の時間に関して余裕があると感じていました。

他人のために時間を使ったときの時間の余裕が出来る感覚はなぜ生まれるのでしょうか。

それは他人のために時間を使うことで自己効力感が増し(6),同じ時間であっても時間内にすべき課題などを遂行できるという感覚が生じ(7),将来の時間の余裕が作り出されるからと考えられています。

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(1)Mogilner, C., Chance, Z., & Norton, M. I. (2012). Giving time gives you time. Psychological Science, 23(10), 1233–1238.

(2)Waldum, E. R., & McDaniel, M. A. (2016). Why are you late? Investigating the role of time management in timebased prospective memory. Journal of Experimental Psychology: General, 145(8), 1049–1061.

(3)McLoughlin, Aoife (2010) The time of our lives: an investigation into the effects of technological advances on our temporal experience. In: Abstracts from the 40th Annual Psychological Society of Ireland Conference. From: 40th Annual Psychological Society of Ireland Conference, November 2010, Athlone, Ireland.

(4)Ariely, D., & Wertenbroch, K. (2002). Procrastination, deadlines, and performance: Self-control by precommitment. Psychological science, 13(3), 219-224.

(5)van de Ven, N., van Rijswijk, L., & Roy, M. M. (2011). The return trip effect: Why the return trip often seems to take less time. Psychonomic bulletin & review, 18(5), 827

(6)Grant, A. M., & Gino, F. (2010). A little thanks goes a long way: Explaining why gratitude expressions motivate prosocial behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 98(6), 946–955.

(7)Zauberman, G., Levav, J., Diehl, K., & Bhargave, R. (2010). 1995 feels so close yet so far: The effect of event markers on subjective feelings of elapsed time. Psychological Science, 21(1), 133–139.

■いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学/センディル ムッライナタン (著), エルダー シャフィール (著), 大田 直子 (翻訳)

■アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-/ダン アリエリー  (著), ジェフ クライスラー (著), 櫻井 祐子

■GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代/アダム グラント (著), 楠木 建  (監訳)

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