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スマホを見ていると変化に気付かない「非注意盲目」

デバイスを見ていると,身の回りの環境に気付かないという趣旨の論文を見つけたのでメモ(1)。

これまでの研究を見てみると,携帯を使いながら別の作業をすることで作業の成績が下がることが分かっています。具体的な例を挙げると以下の通りです。

・スマホを使いながらの運転は飲酒状態の運転よりも危ない(2
・スマホ運転は状況の変化に気付きにくい(3
・スマホを触っているとキャンパスの木にお金がなっていても気づかない(4

このように他の作業時のスマホの使用は注意の資源を割き(5),本来注意を向けなければならない活動(e.g. 運転)のパフォーマンスを低下させます。

今回紹介した論文はデバイスを使っていると,身の回りで特異なことが起きても気が付きにくいことを教えてくれます。

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2010年にウェスタン・ワシントン大学のイラ・ハイマンらがデバイス使用中の注意について調べるために実験を行いました。

実験の舞台は大学の広場にいた大学生151名でした。その大学生は以下のような活動をしていました。

・携帯を触っている
・音楽を聴いている
・何もしていないetc.

そして,その広場に一輪車に乗った,ピエロの格好をした男性が横切り,その存在に気付くのかを観察しました。

その後,実際に広場にいる人に対し,①何か変わったことがあったか,見ていないと回答したのであれば,②ピエロは見たかを尋ねました。

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実験の結果,携帯を触っていた人は他の活動をしていた人(e.g. 音楽を聴いている人と比較してピエロの存在に気付く割合が低かった。

詳細な数字を明記すると,①携帯を触っている人は25%が,②人でいた人は51%が,③音楽を聴いていた人は61%が,④複数人でいた人は71%がピエロの存在に気付いた。

最後に尋ねた「身の回りに変わったことがあったのか?」という質問に対しても他の活動をしていた人よりも周りに変化があることに気付いていなかった。

この結果から考えると運転中にスマホを見る行為の危険性が高くなることはもちろんのこと,事故率を上昇させることが理解できると思います。

このようにスマホは他の活動に比べて,注意の資源を削減し,身の回りの環境に対する注意を払うという簡単な活動でも弊害を生じると言えるでしょう(非注意盲目,6)。

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(1)Hyman, I. E., Jr., Boss, S. M., Wise, B. M., McKenzie, K. E., & Caggiano, J. M. (2010). Did you see the unicycling clown? Inattentional blindness while walking and talking on a cell phone. Applied Cognitive Psychology, 24(5), 597–607.

(2)Crudell, D., Bains, M., Chapman, P., & Underwood, G. (2005). Regulating conversation during driving: A problem for mobile telephones? Transportation Research Part F, 8, 197–211.

(3)Beede, K. E., & Kass, S. J. (2006). Engrossed in conversation: the impact of cell phones on simulated driving performance. Accident; analysis and prevention, 38(2), 415–421.

(4)Hyman, I. E., Jr., Sarb, B. A., & WiseSwanson, B. M. (2014). Failure to see money on a tree: Inattentional blindness for objects that guided behavior. Frontiers in Psychology, 5, Article 356.

(5)Strayer, D. L., Drews, F. A., & Crouch, D. J. (2006). A comparison of the cell phone driver and the drunk driver. Human Factors, 48, 381–391.

(6)Simons, D. J., & Chabris, C. F. (1999). Gorillas in our midst: Sustained inattentional blindness for dynamic events. perception, 28(9), 1059-1074.

■注意を操る心理学~気が散ることだらけの現代で自分を保つには/ステファン ファン デル スティッヘル (著), 清水寛之 (監修), 井上智義 (監修)

■人生を変える集中力の高め方 集中力が劇的に向上する6つの話/ステファン ファン スティッヘル (著), 枝川 義邦 (監修), 井上 寛之 (監修), 清水 智義 (監修), 徳永 美恵 (翻訳)

■錯覚の科学/クリストファー・チャブリス (著), ダニエル・シモンズ  (著), 成毛 真 (解説), 木村 博江 (翻訳)

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