丸つけは問題を解いた最後にする
丸付けを最後にするとよく頭に残るという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。
これまでの研究を調べてみると,ちょっとした工夫で記憶の定着率を高まることが分かっています。具体的な例を挙げると以下の通りです。
・学習と試験の間隔を空けるとよく頭に残る(分散学習,2,3)
・他人に教えるつもりで学習すると記憶に定着する(4)
・想像は記憶を増強する(5)
今回紹介する論文は丸付けをするタイミングによって記憶の定着率に違いが出ることを教えてくれます。
2008年にワシントン大学の心理学者であるアンドリュー・バトラーらが適切な丸付けのタイミングについて調べるために実験を行いました。
実験の対象となったのはワシントン大学の大学院生72名でした。
実験参加者をランダムに4つのグループに分け,歴史について学習してもらいました。その4つのグループというのは以下のような違いがありました。
<グループ1>
何もやり直しもしない
<グループ2>
42問から成る選択式テストを解くが,丸付けはしない
<グループ3>
42問から成る選択式テストを解き,1問終えるたびに丸付けをする
<グループ4>
42問から成る選択式テストを解き,最後にすべて丸付けをする
そして1週間後に学習したことに関するテストを受けてもらい,それぞれのグループの成績を分析しました。
実験の結果,①最後に丸付けをしたグループ4,②1問ずつ丸付けをするグループ3,②丸付けをしないグループ2,④何もしないグループ1の順番で最終テストの点数が高かった。
つまり,問題をすべて解き,問題を解くたびに丸付けをした場合に他の丸付けの仕方・しなかった場合と比較して最終テストの成績が1番高かくなりました。
今回紹介した研究では,学習と再学習の間隔を空けるのではなく,正誤を判断する丸付けと学習との間隔を設けることで記憶に良く定着することを示しています。
論文では,問題をすべて解いてから最後に丸付けをすることで短期間でまとめて学習をする集中練習ではなく,学習に間隔を空ける分散練習になることで最終テストの成績が高くなったのではないかと考察されています(分散効果,6,7)。
(1)Butler, A., et al. (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36, 604-616.
(2)Kerpicke, J., et al. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319, 966-968.
(3)Rohrer, D., Taylor, K., Pashler, H., Wixted, J. T., & Cepeda, N. J. (2005). The effect of overlearning on long‐term retention. Applied Cognitive Psychology, 19(3), 361-374.
(4)Nestojko, J. F., Bui, D. C., Kornell, N., & Bjork, E. L. (2014). Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages. Memory & cognition, 42(7), 1038–1048.
(5)Bower, G. (1972). Mental imaginary and associative learning. New York, John Wiley, 51-88.
(6)Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. III. (2007). Repeated retrieval during learning is the key to long-term retention. Journal of Memory and Language, 57(2), 151–162.
(7)Roediger, H. L. III, & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.
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