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目立たないけど重陽の節句が好きなのだ。菊花尽くしの品々。

「ククク…奴は五節句の中でも最弱…」

そもそも節句が5つなのを把握している日本人はそんなに多くない。
他の4つは、七草粥、ひな祭り、こどもの日、七夕、と知名度があるのに、重陽の節句は菊花酒。

そりゃ最弱と言われても仕方ない。

ただ、僕はその目立たない重陽の節句が好きなんです。
今日はそんな日の菊花料理をいくつか書いてみようかと思う。
今年はもう過ぎてしまったけど、来年の為に、再来年の為に。


・酒と菊花と酒と酒

クリスマスやバレンタイン、ハロウィーンなんかの西洋文化ばかりを盛大に祝う昨今の日本。
日本文化が好きで少しばかり天邪鬼な僕としては、この地味な重陽の節句にはなんだか愛おしさを感じる。

河島英五さんの名曲”時代おくれを”一緒に聴きたい所存である。


そもそも菊花酒というのは万人受けしない。
未成年は飲めないし、成人してても日本酒を飲む人口はかなり少ない。
一日本酒好きとして思うのは、昨今の美味しい日本酒に菊花を入れるのはあんまし合わない、香り高くバランスのいい日本酒が普通に手に入る時代に菊花酒をするの風流ってこと以外の利点が、、、ううむ、、

そりゃあ廃れるわな。時代おくれの行事であると言わざるを得ない。


また、スーパーマーケットに行くと実感する。
菊の節句特集ってのをやってるとこはほとんど無い。
クリスマスやバレンタイン、ひな祭り、そういうのと比べてまぁ扱われない。

けどね、最近は行事関係なく菊花を置いているとこが増えた。
たいていは薬味のコーナー、カイワレ大根や大葉、バジルやパクチーと並んでいる。
だから普通に手に入る。

菊の節句前だからって高くなったりもあんま無い。

”十日之菊”って言ってさ、時期が遅れたら価値が無い。みたいな例えもあるのに、今じゃ九日も十日も春も秋も同じように菊が売っている。良いのか悪いのか…


それでも、それでこそ僕は重陽の節句を大事にしたい。
9月9日。重陽の節句の食事。

菊花に合わせて和食。ではあるのですが、メインはなんとラム肉!!
ちょっと風変わりな重陽の食卓。

・菊尽くしなのに羊がメイン?

ラム肉のステーキ
焼きレンコンの菊花和え
キノコの菊花酢
菊花とバジルのサラダ
菊花の沢煮椀
玄米

黄色の強い食卓じゃね~

羊と蓮根と菊花の良い関係

ラム肉、ホントは前日に食べる予定だったんだけど、都合があってこの日に。
けどね、菊花って癖があってほろ苦くて、少し土っぽい香りがするので、鶏や豚よりも羊の方が相性が良い!!気がする。

ラム肉に軽く塩をしてバチっと焼き上げた。
脂身をなるたけ焼き付けて、ガスバーナーで炙るのも併用した。美味いんだ~


レンコンは大きめに切って茹でてから焼いた。
塩を軽く振って、仕上げに菊花を和える。
土っぽい香り同士、相性が良い。
きっとこれに人参やゴボウを合わせても美味いだろうなぁ~~

菊花とバジルのサラダ

生のレタスに生のバジルをたっぷり混ぜる。
癖があるけど、コレも美味い。

そしてもちろん菊花も!
菊花のほろ苦さとバジルの癖が合わさるとルッコラとかクレソンとか、そういう系統に思える。
モリモリ食らう幸福。

モッツアレラをちぎって合わせたらきっとお洒落な品になるでしょう。
菊花酒じゃなくてミモザが合うようなね。

菊花の沢煮椀

沢煮ってあんまし知られてないかもしれないけど、大好物でさ。
根菜類を中心に季節の野菜を千切りにして炒める。
出汁、酒、塩、薄口醬油、みたいな味付け。

で、今回はゴボウ、人参、レンコン、椎茸をゴマ油で炒めて、酒多めにいれて煮詰め、熱い出汁を投入。
沸騰したら塩、ネギをいれて、仕上げに菊花と少し薄口醬油で完成!

たまらなく美味いぜよ~~!
菊花特有のほろ苦さがたまらんばい!

キノコの菊花酢

茹でたキノコを土佐酢(鰹節の効いた合わせ酢)で浸すのって結構定番だけど、今回は酢ではなく柑橘でやった。
まぁ、実際は酢が赤酢、梅酢、レモン汁、寿司酢、ポン酢しかなくて出来なかったのでね。

キノコを茹でて水に落として搾ったのに、サッと茹でた菊花の絞ったのを合わせて
青い湘南ゴールドの果汁、スライスすだち、粉末出汁、薄口醬油で良い感じに合わせる。

今回のキノコはぶなしめじ、白しめじ、ヒラタケ、椎茸、舞茸、の5種でした。自由に。

味付けの比率は柑橘果汁と薄口醬油は2:1くらい。
たまにいるスダチが良いのよ、極薄だから食べれるし、酸っぱ苦くてたまらんばい!

あと、菊花は酸と合う。
色も綺麗にでるしね~

これ、菊花もスダチも美味いけど、無いなら無いで土佐酢でも美味いし、保存も効くから冷蔵庫にあると幸福なんだ~

・飲んで飲んで飲まれて飲んで~

菊酒は3世紀の中国から始まってて、日本には平安時代に。
主流になったのは江戸時代らしい。

その頃の酒の質は、まぁ調べてみてください。
きっと菊花をいれるのも納得するサ。


だからね、今の美味しい日本酒で菊花酒をするのはあんまし向かない。
吟醸、大吟醸はもちろん、純米酒や特別純米酒でもあんまし合わない。
華やかすぎる。

菊花酒

いい具合に手頃なアル添(アルコール添加)の本醸造で。
名前も菊に合うべ。

本来ならどぶろくとかでやるのが合うのかもしれんけどね~~
あ、美味いけどやっぱ物理的に飲みにくいわ~
花弁がグラスの縁に着く、食えないし飲みにくい。

味はいわゆる日本酒。
最近の流行のじゃなくて力強く癖もしっかり。
だからこそ菊が合う。
アルコール感と菊花の弾ける香り。いいじゃない。

菊花酒ロック

でも少し癖が強いので、ロックにして、青い間引き湘南ゴールドを少し。
ハイカラな感じ。爽やかで飲みやすい。カクテルっぽい!
これもいいね~~!

日本酒は基本的にそのまま飲むけど、こういう飲み方も好きよ。
ロック、柑橘、ソーダ割り、むしろそういう多様性がある方が日常の酒でしょう?と思う。

菊花酒ティーニ

で、極めつけは酒ティーニ!
マティーニの日本酒バージョン。

本来は白ワインで作るベルモットを日本酒と焼酎で作ったサケベルムースを手に入れたのでね。

最近サケベルムースが美味すぎて、酒ティーニもマティーニも飲みすぎてしまう。今もそう。

そうそう、数年前のレシピだけど、菊花と日本酒が余ったらコレおすすめです。
春菊とかバジルとかああいう感覚で使うのが良い。


・生きてりゃいいさ

重陽に菊花酒を飲むのは長寿を祈って飲むそうだ。
長寿の為に酒を飲むなんて馬鹿らしいと思うかもしれない。
けど、それは時代背景にもよる。

今ほどアルコールが多くない、どぶろくと甘酒の間くらいの物だったかもしれない。
と思うと長寿になるのも分かる。


最近なんだか祝い事の料理を作る機会が増えた。
その中でいわゆる縁起物の料理や食材を見るのだが、そろそろアップデートしていいのかも?と思ったりした。

もちろん伝統だし、そういう文化は大事にすべきだが、新しいのがあっても良いよね。
子沢山、豆に働く、夫唱婦随、なんか言われて出されるとちょっとムッとなるし。

僕としてはそういうのをあんまし強制しすぎずに(もちろん伝統は大事にしつつ!)健康長寿をひたすら願おうと思ったりしている。
健康に長生き。これくらいなら祈っても良い気がする。


余談だけど、テキトーに雑に縁起物にするのが好き。
ドーナッツは見通しがよくて、カンガルー肉は飛躍、セロリは筋が通ってて、ステーキは素敵、ってな~
そうやってテキトーに生きたいもんだ。


河島英五さんの歌詞は今でも染みるんだなぁ。
生きてりゃいいさ。


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