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春眠暁を覚えず【きまぐれコラムもどき①】

 この春入学した小学一年生だろうか。今朝方、登校中の親子を見かけた。緊張した面持ちで重そうなランドセルを背負う女の子と、あくびを堪え、眠気まなこを擦りながら歩くお父さん。新年度最初の過酷な一ヶ月を乗り越えた親子の労をねぎらいたく、すれ違いざまに思わず小声で「頑張って」と呟いてしまった。

▼〈春眠暁を覚えず/処処啼鳥を聞く〉盛唐の詩人、孟浩然の代表作『春暁』の冒頭にある。厳しい冬はとうの昔に去ってしまい、ジメジメとした梅雨の足音もまだ聞こえぬ春の明け方。居心地の良いこの時期は、布団の上でつい寝過ごしてしまいがちなものである。遠い昔、7~8世紀の中国でも、春の朝の心地よさは格別なものであったようだ。

▼明日から、大型連休の後半戦が始まる。行楽地へのお出かけを楽しみに4月を乗り越えた子どもたちもきっと多いだろう。あの女の子も素敵な思い出を作れるかしら。そうと思うと同時に、寝不足のお父さんが存分に春の眠りを満喫できることを願わずにはいられぬ前夜である。

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