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おじさんの交差点【気まぐれコラムもどき④】

 冬本番。暖房器具なしには生きていけない毎日である。動物たちが眠りにつく冬も、人間は秋と同様に朝早くから動き出す。昨日、白い息をはきながら登校する少年とすれ違った。ずいぶんと薄着であったが、背筋を伸ばして歩く姿が逞しかった。彼もまた、学校の水道水やランドセルの留め具の冷たさに冬を感じているのだろうか。若山牧水の歌にある。
〈若竹の伸びゆくごとく/こども達よ真直に伸ばせ/身をたましひを〉

▼名前は分からないけれど、いつからか顔なじみになっていた人がいた。小学生だった十年近く前、毎朝同じ交差点に立って登校を見守ってくれていたおじさんである。雨の降る日も、冬の寒い日も、毎日同じ場所に欠かさず立っていた。当時の脳内通学路には「おじさんの交差点」が当たり前のように組み込まれていたものである。

▼今振り返って実感する。毎朝早くから外に立ち、危なっかしい足取りの自分を見守ってくれることがどれだけありがたかったか。顔もぼんやりとしか覚えていないおじさんに感謝したい。先日の新聞に掲載されていた一句を引いておく。
〈 「道草をするな」と今日も声かけて/黄色い旗のおじさんとなる 〉
(北村純一さん・厚木市)

▼全国各地に、通学路のこども達を見守る地域のおじさん、おばさんがいる。本当に頭が下がる思いだ。黄色い旗を持った彼らに見守られながら、事故無くまっすぐな若竹が育つと良い。



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