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月の車輪 「 Mémorandum」

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私の創作物、エッセイを集めたものになります。 収集テーマは「寝読み本」 創作の深い海に潜りながら握り続けたペンの先は何処にあるのかを探していければと思います。
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2021年7月の記事一覧

湖岬

湖岬

自転車を漕いだ。湖沿いの深夜の路地を夜歩く蟻達を追い越して、
後ろには私の腹を抱くように掴まる亜麻色の髪が一人。
無機質に冷めきった路地の切れ目を渡ると月光の当たり方もやや変わって夜光虫の喧騒が嗚呼唯、よく見える。
砂防林の間からその様子を眺めて、夜風が私の前髪を引っ張る。
亜麻色の髪はまだ目を覚まさない。

この反対の岸には大層立派な大学病院がある訳だが、この静寂の中でその夜景が湖面に反射し、夜

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縁

流れていく雲に手を伸ばそうが届かない

靉靆を眺めるばかりの
窓際の一輪の野花は

花弁を落とす

水をやる。

花弁を落とす。

薬をやる。

花弁を落とす

小さな灯火が最後に燃え盛るような八月某日

そこには散った花々の上に
蜉蝣がいた

虚構

虚構

虚構でしか生を描けない

虚構の中に愛情が宿る

虚構の中と早朝の喧騒に虚無透かし

足つけた生暖かい泥の上に寝て

湖面の月光が邪魔な目を包めば

想い出の狭間

孤独の平穏

愛と快楽

夜と人間の灯り

私は湖岬に一人

私の手を眺めても
体温のまま

雨粒眺めても

虚構の中でしか生を体感できない