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海の底

帰り道、風が強く吹いたとき、空を鯨が泳いだ気がした。10年に1度の寒波のおかげで、あたりが深海のように暗く冷えていたからか、木の枝や葉っぱが舞ったことで風が波のように見えたからか、低く唸る風が鯨の声のようだったからか。
鯨が私の横を通り過ぎた。ただそう思った。
鯨が空を泳いだら、どんなに素敵なことだろう。

私は海の底を歩いて進む。鯨が泳ぐ星空の海。
頭の中に描いた景色を、ずっとずっと忘れたくないなと思う。

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