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有神論、無神論、不可知論

 今回もビッグなチャレンジですぞー、と、今月いくらかの本を読もうという個人的な努力、いま六冊目と七冊目を同時進行している次第。時間の割り振りやサボりやスケジュールを考えてみれば目標に間に合わない可能性もある。だが脳に知性的栄養がバシバシ入ってきていて、いまちょっとあたくし賢い状態にあると思う。神経細胞がうねりまくっている。一時的なものだとしても。

 ちょっとアウトプットしないと頭がパーンと割れそうなので読書メモとして書いておく。

 別件での読書の折に教わったことには、哲学が扱うものに大きな問題が三つあるという。ひとつは「私とは何か」、もうひとつは「世界とは何か」、最後に「神とは何か」。三本柱として古来より脈々と考えられ続けてきたものであろう。

 このうち「私」については脳科学が代理的に研究をやっていて、意識については脳にだいたい起因するでしょう、くらいのところまでは来ている。そういうのを唯物論というらしいのだが、心身二元論になってくるとまた様相が違うらしい。ややこしくなるので深くはふれない。

 世界とは何かについては宇宙論から量子力学まで出てくるので、多次元宇宙からホログラフィック原理から素粒子からと、またややこしいのでこれも一度おいておく。ただこの宇宙が生まれた原因を遡っていくと、何かの力が働いたときに宇宙ができたとする場合、その何かの力って何よ、というところから神の問題につながっていく。究極の始まりが神だったのか、ではその神の始まりの原因はあったのか、あるならば神は最初のものではないのだろうか。いいたいことがずれてきたのでおいておく。

 宗教哲学というものがあるらしい。おや、宗教と哲学は対立しないのかい、と問われたら、スコラ哲学から各種神学からと、哲学のアプローチで神を議論するということは古来この方ずっと行われてきたようなのだった。宗教と対立するのはむしろ科学的態度だ。いま読んでいる本で否定的に検討されているドーキンスの立場だ。新無神論者と呼ばれる一派がいるらしい。それはそれ。

 ユダヤ人たちのランチ。ユダヤ人ないしユダヤ教徒たち、メシを食いながらこんな討論をやるらしい。

・神は全知全能である。
・よってご自身が動かすことができないほどの岩をつくることができる。
・だから神は全知全能ではない。

 そんな論述の否か応か、問題はどこかを語り合うと聞く。この手の困難な会話を日常的にやってるあたり、さすがにあいつらは一味違うと思うものなんである。本場ヘブライズムすげえなと。神の定義その他について縦横に行き来して話せる柔軟さがユダヤの民にあるとして、それが信仰に差し障りないのだとなれば、彼らは今後も討論をし続けるでしょう。

 ときにあたくしの立場が何かといえば、不可知論を採用している。これは無神論ではない。神がいてもいなくても、それを人間は認識できない(不可知)のではないか、という話で、存在それ自体の可能性をどうこうとはいっていない。たとえ認識できないにせよ、いてほしいと望むくらいである。ここではパスカルの援護射撃がある。いわく、「神が存在するのかしないのかは不可知である。とするならば、われわれは、神が存在しているほうに賭けるべきだ」。この応援を見つけられたあたり、やはり読書はするべきものだなあとしみじみと。

 また、有神論については経験的に導かれることがあるようだ。話のバランスをとるためにある信徒の宗教体験を引いておく。

 そこにあったのは、なにかがそこにいるという単なる意識ではなく、その中心の幸福に融け込んだ、なにかことばではいい表せない善の、驚くような意識だった。あいまいでもなく、詩や場面や花や音楽の感情的効果のようでもなく、ある種の偉大な人が近くに存在するというたしかな認識であり、それが消えてしまうと、ひとつの現実の認識として記憶が残った。それ以外のものはすべて夢だったのかもしれないが、そうではない。

 素直にいって、そういう体験を味わってみたいものだとは思う。

 また個人的な話をするが、これまで自分の書いてきた小説を思い出すと、ところどころで神の概念への接近が見られるのだった。『ウィズ・ナッツ』においてはドーキンスを買おうとした古書店で「無神論者か?」と問われる。のちの『イーストエンド・ガーディアン』では「お前の神に祈れ」という台詞がある。またのち、『東九龍絶景』においては聖書に依らない神父の(それはもう神父ではないのかもしれないが)説教があり、これがかなり不可知論に傾いたものになっている。最新の作品では神社で神の議論の簡単なものを一席やっていて、これは明らかな不可知論となっている。さして参考資料は用いずに書いたが、あたくしの現時点での落としどころがそこなのだろう。

 今月、活字を浴びるように読み込んできた。まだ時間があるのでノルマのクリアを目指してもうちょっとねばろうと思う。目と首と肩と腰が痛い。それもまあ仕方ない。眠い。

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金井枢鳴 (カナイスウメイ)
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