課題の分離のスイッチ
嫌われる勇気 コラム:アドラー心理学と科学①
今日は一呼吸置いて、アドラー心理学が科学的にはどうなのか?という考察をしてみようと思います。
現在は、アドラー心理学のコア概念の1つ、課題の分離に焦点を当てていますが、科学的にはどうなのでしょうか。
承認欲求と期待
承認欲求ど真ん中の研究もあるとは思いますが、今日は、承認欲求を”期待に応える”と置き換えて見ていきます。例えば、かつてより人間が目上の人の期待に応えようとして頑張るという話は聞いたことありますよね。例えば、ピグマリオン効果とか。
ピグマリオン効果:他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果、学校の先生と生徒の関係で語られることが多い
でも、これらってアドラー心理学とは真逆ですよね。つまり、他者からの期待を頼りにしない、そう、承認欲求を捨てることがアドラー心理学でいう課題の分離の根幹であり、他者の期待に応えることとは一線を画します。
では、アドラー心理学はやはり哲学であって科学ではないのか?というとそうとも言い切れません。
負け犬効果 The Underdog Effect
すごい名前の効果があったものです。この効果は昔から言われているものの、それと期待との関係を明らかにしたのが、ペンシルバニア大学が2019年に発表した研究です。
https://journals.aom.org/doi/abs/10.5465/amj.2017.0181
メンタリストDaiGoさんが昨日のYouTubeの放送で取り上げていました。本当に偶然、ホットな放送でした。
負け犬効果:事前に劣勢であったり、不利であったりした方が、応援や支援が増加する効果
ちょっと本筋の定義からは繋がり辛いですが、この研究によると、事前に俺は負け犬だ、誰にも成功を期待されていないと思っていた社員の方がパフォーマンスが高かったというのです。
つまり、”期待されていない”と思って取り組んだ方がパフォーマンスが上がる。「それは、期待されたい、という気持ちの裏返しじゃないの?」と突っ込まれると、痛いですが…、次の研究が面白い。
課題の分離のスイッチ
ここからは考察になります。先ほどの研究には続きがあって、実は、有能な人に期待されなかった場合よりも、無能な人に期待されなかった場合の方がモチベーションとパフォーマンスが上がったのだそうです。また、なんと、上司からの評価も高かった…。因みに、有能だと思っている上司から期待されていないと思ってしまうと、成績は下がってしまったそうです。
ここで思ったのは、われわれに元々備わる、劣等性と優越性の追求の発動要因の1つが負け犬効果なのではないかということ。つまり、われわれが向上心を持つきっかけとして一番基準になるのは、他者の存在。当然それは、対人関係の問題に発展する恐れはありますが、正しく使えば薬にもなる。
そこで、”無能なあの人に期待されていない自分”と思うことにすると、向上のための努力が発動し(負け犬効果)、しかも、それは、もともと”無能”と見ていた人との関係からだから、結果、その人から評価が上がろうが上がるまいが関係ない。結果、自分の課題となり自分と向き合い、結果も自分が享受することとなる。
ちょっと強引ですが…、スイッチ自体に価値があるかどうかは問題ではないですから、試してみる価値はあるかもしれないですね。
課題の分離はそれ自体を実践することが非常に難しいです。であるなら、スイッチを作ってみるのも手かもしれません。
ご参考まで。