9回の特攻出撃から生還を果たした特攻兵がいた
体当たりしろという上官の命令に抗う21歳の若者
三連休の初日と3日目は仕事でしたが、真ん中の日曜日は自宅で読書。読み終えたのは『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上尚史著)です。鴻上さんの本が好きで何冊か読んでいますが、これも良かった。
第二次世界大戦の末期に、特攻機で敵の艦隊に体当たりをした特攻作戦のことはよく知られています。本書の目的の入り口はこの特攻作戦であり、「はじめに」には下記のように書かれています。
なぜ特攻作戦は決まり、なぜ誰も止めなかったのか?
「はじめに」に続いて、「第1章 帰ってきた特攻兵」「第2章 戦争のリアル」「第3章 2015年のインタビュー」「第4章 特攻の実像」と進みます。3章のインタビューは存命だった佐々木さんとのものです。
出撃しながら9回生還した佐々木さんの心になかにあったものとは?終戦を迎え、命からがら日本へ戻り、たどり着いた郷里で待っていたものとは?このあたりは実に生々しく描かれ、本当なのかと思えてしまいます。
そして、当時の軍部はなぜ特攻作戦を決めたの?か、特攻作戦は止められなかったのか?、その背景には何があったのか?、兵士たちはなぜ逆らわずに従ったのか?・・それらをさまざまな史実をもとに克明に描いています。
命令する側と命令に従う側の論理
80年近く前の話ではなく、ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ など、いま世界で起きている紛争や戦争でも同様だと思います。愚かだとわかっていながら、誰も止めることができない現実がそこにはあります。
鴻上さんは自分自身も劇団の演出家であり、集団を率いて、集団の長であることを前提として、「命令する側」の在り方について次のように書いています。僕も経営者なのでこの一文は響きます。
変化のスピードが早く、先行きの見えにくい時代において、経営者は何を基準に意思決定したらいいのかを突きつけられた一冊です。ぜひお読みいただければと思います。