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勇者または勇者のパーティになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断わりました 8話

         真相

彰「はぁ?ちょっと待ってくれ、衝撃過ぎる情報が一気に入って来たから整理が付かない」
萌「私が転移された時にもう一人居たのよ」
     萌が話すにはこうだ
 萌が転移された日の少し前、もう一人転移させられていた。だがその者には称号が付かなかった。称号とは転移者や召喚者に与えられるギフトである、萌は魔力。彰は力、ギフトを貰っている者には其々の職業が称号として表記されるのだ。それを確認するには照合石に触れれば良い、称号には様々なものがあり勇者や魔術師、戦士や剣士等戦闘向きなものだけでなく、商人や開拓師、技師と言った様に戦闘向きでないものもある、だがまたこれらも己の土地を良くする為に価値のあるものとして取り引きされ、中でも農耕師はとてもレアで必ず高値で取り引きされるのだった。
❋『召喚•転移』させられた者は必ず隷属の首輪を嵌めさせられ奴隷として生涯を終える❋勇者には体質から首輪の効果が効かない。
(また、使い物にならなくなった者は純度の高いラベリアルの花の蜜を飲ませ、腐敗から毒が蔓延するのを防ぐ為、森に棄てるのがいつの日が当然となっていた)
      ❋取り引きの流れ❋
 先ず王族が術師を使い異世界の者を転移•召喚させる、王族に必要の無い称号持ちは奴隷商を通じ貴族達に売られる。また称号を持たぬ者は消去する為に、純度の高いラベリアルの花の蜜を飲ませ森に捨てられる。そしてその生き残りが魔族となる。
      ❋転移•召喚❋
 転移とは生きた儘呼び寄せるが、能力が発揮されるまでに数年要する、転移後ギフト成功率が高い。
 召喚とはこちらも生きた儘呼び寄せるがギフト成功率はとても低い、だがギフト成功者はその力を直ぐに発揮させる事が出来る。
     ❋ラベリアルの花の蜜❋
 王族が呼び出した異世界人は称号を確認する為に『ラベリアルの花』の蜜を飲まされる、この花は毒性が強く死に至る事も少なくない、だが花の成分には能力向上のエキスや称号を付与する為の養分も含まれている。
 純度の高いラベリアルの花の蜜は、廃棄処分の異世界人に飲ませ毒で抹消させる。
 冒険者ギルドに加入するには称号が絶対条件である。そこでギルドは蜜の成分から称号だけが付与される養分を抽出する事に成功し、冒険者を目指す者に高値で販売している。だが王族は能力向上も必要な為に割と純度の高い物を飲ませていた。
      ❋魔族について❋
 ラベリアルの花の蜜を飲まさせた異世界人は、その毒素に打ち勝った者は称号が付与(称号は全て魔人)負けてしまった者は死···。だが生き残った者達に幸福は無い、毒素の副作用で人体変化が起こってしまう、角が生えたり牙が生えたり、指が変形し長くなり爪も鋭くなったりもする。この者達が魔族として新しくこの世界で集落を作り生活していた。
 最後に萌より先に呼び出された者は、ギフトを貰えず純度の高い蜜を飲まされ運び出されて行ったらしい。
 その話しを聞いた直後に、彰と萌は王様に呼び出された。

王「と言う訳で魔人達が商人達の荷車を襲撃したり、魔族の集落に近い村を襲ったりと山賊紛いの事をこの所頻繁に起こしている。集落付近の村々で一番被害が大きいのはここより北東にあるヘライ村だ」
萌「ヘライ村······確かあの村の近くにはエルフの里がありましたね?」
彰「エロフ!!」
王「ん?」
彰「あ、すみません、俺の世界ではエルフは美女が多いって話しですので」
萌『今エロフって言ったわよね?』
 呆れる萌に対し大笑いの王は、問題を解決したら骨休めにエルフの里に寄って来れば良いと言ってくれた。また街外れの奴隷商ではたまに高値で売られているとも。
萌『こんな事あの男が知ったらこの国も終わりね?』
 話しを終えた二人は、ヘライ村へと向かう為に城を出たが、直ぐに萌は彰を止めた。
萌「何か平然としているけど、相手の魔人は元々私達と同じ世界の人間よ?どうするの?」
彰「どうって、暴れてんなら止めさせないと」
萌「大人しく話し合いになるとは到底思えないわよ?」
彰「そうか?同郷同士案外話しが合うんじゃないのか?」
萌「本当にそう思っているの?言っとくけど私達は成功者、彼らは失敗者で毒を飲まされ見捨てられたのよ?恨まれはすれど共感される事なんて有り得ないわよ!!」
 だが、それでも飄々としている能天気振りに苛立ちを見せる萌だったが、直ぐに冷静になり取り敢えず今日は荷支度だけをする事にした。


 その頃セシルは長年の親友と会っていた。だがその親友の目は朱く額には角が生えている、また指も長く爪が鋭くなっていた。
 そう、彼女は魔人であった。暫く話し込んでいたが、その話しも終わり女は森へと消えて行った。
 気を利かせ距離を取っていてくれた輝の元へ向かうが、心許セシルの表情は暗かった。
 輝「どうした?何かあったのか?」
セシル「輝様は魔族の事はご存知ですか?」
 知らないと答えた輝に魔族に付いて説明をするが、何かを伏せている事に気付いた輝が話しを中断させた。
輝「俺に話しずらい事でもあるのか?無理して聞こうとは思わないが」
 セシルは下を向き暫く考え込んだが、力強く顔を上げると魔族に付いて、王国や共和国の召喚と転移に付いて語り始めた。
 終始輝の表情は険しかった、だが受け入れなければならない事実も分かっていた、だから今回は邪神国と同じ様に動いては大きな戦争を起こしてしまう、敵と認識した共和国と王国は国が大きい、戦争なんか起こしてしまったら他の国も動いてしまう恐れがある、いや確実に動く、そうなってしまうと罪の無い民間人までも大勢巻き込んでしまう。

 この世界の絡繰を知てしまったとは言え、自身の力は国家レベルを超える、慎重に策を考えていたらセシルが少し可笑しい······いや、相当落ち着きが無い、何かを言いたそうだが言えずに居る。そんな風に感じた·········。
輝「どうした?セシル、何か言いたい事があればはっきり言ってくれ」
セシル「·········あ、あの······実は数日の間だけ輝様と別行動を取っても宜しいでしょうか?」
 セシルの表情は申し訳無さと言うより何か別の覚悟の様なものを感じた。
輝「あの友人だな?」
セシル「え?」
輝「彼女と話してからセシルの情緒が可笑しくなってたからな?」
セシル「いえ···あ、その······」
輝「はっきり言っておく、幾ら俺がアイテムを渡しセシルの能力が上がった所で、子犬が虎に挑むものだぞ?」
 見透かされたセシルは驚きの顔を見せるが、これまでの輝と過ごし輝を見て来た······『当然か』と小さく呟いて静かに話し始めた。
セシル「輝様に助けて頂いた大きな恩は決して忘れる事は御座いません、ですが彼女は私に取って大切な友人の···共に奴隷商に居た頃の」
輝「ったく···あのなぁ今回だけだぞ?」
セシル「え!!」
輝「はぁ···面倒事は嫌いなんだけどなぁ」
 クスッ
セシル「国を1つ潰した人のセリフとは思えませんが?」
輝「明朝出発する、支度は任せるぞ?」
 セシルの顔から曇りがすっかり消え、大きな返事で輝に答えた。


萌「出発は明日よ?準備は出来てるの?」
彰「準備ったってなぁ、あの化け物チーターと戦う訳じゃ無いんだぞ?幾ら魔人が強くたってギフトも貰って無い奴には負けないって」
萌「多勢に無勢って言葉を知ってるの?」
彰「王様が徴兵するって言ってたぞ?」
 適当な返事をする彰に『私の方が呆れてるわ!!』と腹の中に収め明日は早いからと早々に部屋に戻った。
 
 再び相見える事になろうとは、誰一人として知らぬ儘其々の一夜が過ぎて行った。

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