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勇者又は勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断りました 1話

      陽向 輝と言う男
輝「あ···暑い······矢張りクーラーが···だがそんな金は勿体ないな、その分課金した方がいい」
カチャカチャカチャカチャ·········
輝「うむ···暑さを言い訳にしたくは無いが、効率が悪くなっているのは確かだ······仕方ない、今月の課金を諦めれば扇風機ぐらいは買えるか、このままだとミイラに成りかねん」

 彼はこの物語の主人公 陽向 輝(ひなた てる)51歳独身 バツ2 元子有り
 養育費は1円たりと払っていない、趣味はゲーム、そして一日の大半をゲームで過ごす
 現在生活保護を受けている···詰まる所腐れニートであった

 子供の頃から器用で、何気なくでも興味の持ったものは見ただけでマスターしてしまう特殊能力を持っていたが、本人は全くその自覚が無い
 器用貧乏と言うやつだろう、どんな事でも直ぐに出来てしまう反動、飽きるのも早かった
 性格は大人しいが人とつるむのが苦手で、二度の結婚をしたが上手く行かず現在独り身である
 そんなクズ男だが1つだけ長く続いているものがある、それはゲーム、ゲームをしている時だけが輝に取って絶対領域の幸せな空間であった
 現在はMMORPGに没頭していて生活費の殆どを課金に回し、最低限の光熱費と食費で過ごしていた
 輝は電源を落とし財布を手にすると家を出る
ムァ
輝「う···外も暑い」
 そう呟いて7㎞先のド○キーに向かった

 目的の扇風機を買う事が出来た、現品限りの展示品、箱や説明書が無い為交渉の甲斐があり表示価格よりも安く買えた
 大量の汗をかきながら帰宅してドアノブに手を掛けた、だが輝は肝心な事を思い出し扇風機を玄関前に置き一目散に駅に走った
輝「ヤベェ···すっかり忘れてた、間に合うかなぁ」


 時間は少し遡る······一月前昔の仕事の同僚に偶然再開した 田所 翔太郎(たどころ しょうたろう)48独身 彼女有り
 田所は半ば強引に輝を連れ居酒屋に入った、
酒の肴そのメインは輝の今までの事、田所は輝から仕事を辞めてからの事を聞き出していた
田所「マジかよ輝君、それじゃ廃人じゃん」
輝「ハハハそうかもな?でも独りって本当に楽だわ」
田所「輝君女は?」
輝「性欲はあるけどね?でももういいよ」
田所「まぁ···なの二人がなぁ······あいつらの所為で」
輝「俺が悪かったんだよ」
 輝は田所と同じ会社に居た時に社長と田所の共通の知人の娘と結婚した、三ヶ月を過ぎた頃家に置き手紙があり結婚前から付き合っていた男の所に行くと書かれていた、手紙の末尾には追伸があり離婚届は出しておいたと書いてある
 部屋で立ち尽くしている所を訪ねたのが田所だった、その二年後今度は社長の娘から逆プロポーズされ再婚する、一年後に娘を授かるが産まれて直ぐに妻子は失踪、妻は父親に電話をし好きな男が出来たからその人と一緒になる、と連絡したまま消息を絶つ、社長が弁護士を立て離婚が成立、そして輝は会社を辞めた。

バン!!
 田所は両手をテーブルに叩き付けると、店内に響き渡った、一瞬店内が静かになったが直ぐに元のざわつきに戻る。
田所「俺は輝君に返しきれない恩がある、だから輝君には絶対に幸せになって貰いたいんだ······って事で輝君!!行くよ?」
 半ば強引に輝を連れ出し駅前の大型電気店に入った、田所は真っ直ぐ携帯ショップに入ると店員と話し始めた。
 輝は時間を潰す為に様々な機種のサンプルを手に取り見ていた、時折店員が話し掛けて来るが苦笑いで断っている。
 暫くして田所の話しが終わり荷物を持って輝に近付いて来た。
田所「輝君、悪いけど今日泊めてね?」
 輝は少し困惑したが、田所から大切な話しがあると言われ渋々承諾した。

 途中コンビニに寄り弁当と酒、それとつまみを買って家飲みが始まった。
 缶ビールが3本空いた時田所が無言で紙袋を突き出してた、それはさっき購入していたスマホだ、輝がキョトンとした顔をしていると田所は顔の近くまで突き出して言い放った。
田所「これ今日から輝君のだから」
 輝は驚き断ろうとするが、間髪入れず田所が話し始める。
田所「実は輝君が辞めて直ぐに俺もあの会社辞めたんだよ、それで知り合いを二人誘って会社を始めたんだ、輝君も誘いたかったんだけど輝君携帯持たないじゃん、あれからずっと探してたんだ」
 輝の顔が申し訳なさそうに歪む、突き出されたスマホの袋を手に取るとその先には曇りのない笑顔の田所が居た。
田所「今日会えたのはマジで嬉しかった、それ会社名義だから気にしなくていいよ?」
 輝は首を振り「駄目だ」と口を開こうとするが、田所はそれさえも遮り話し始める。
田所「大丈夫、俺は輝君の事信じているから、それに正直俺の会社に来て欲しいと思っている、でも輝君が今の生活が良いって言うんだったらそれでも構わない、俺はまだ輝君と友達でいたいんだ、それはあの時のお詫びでもある」
 田所は自分が紹介した女の事をまだ後悔していた、それを知った輝は黙って田所の頭を撫で見上げた田所に笑顔で応えた。
 田所の顔に笑顔が戻ると、輝に渡したスマホを取り出しどこかに電話を掛け始めた。
田所「こんな時間にすまない、お前が会いたがっていた人がやっと見つかったよ、いつにする?」
 輝はそんな会話をしている田所を肴に缶ビールを一本空けた。
田所「輝君、悪いんだけど来月の7日にこの人に会ってくれないか?」
 そう言って自分のスマホから一枚の写真を見せて来た、そこには細身で顔立ちの良い女性が居る、田所は結構前に会社の同僚とド○ールで輝君の話しをしていたら突然話し掛けられて、輝君を紹介してくれと言い寄られ連絡先を交換したらしい。
 だが輝には全く身に覚えの無い女性だった、でもここで断るのは田所に悪い、そう思った輝は会う事を了承した。
 そして当日を迎えたのだった···が

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