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勇者又は勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断りました 5話


        勇者召喚
「こ、ここはどこだ?僕は一体」
「召喚に成功しました、ですが代償として召喚士が」
「よい目的は達成した、後の事はお前に任せる」
 『この人達は何を話しているんだ?ここはどこだ?確か僕は友人とカラオケをしてその帰りに······そうだ!!突然身体が光りだして』
 山之辺 彰(やまのべ あきら)21才彼は何処にでも居る普通の大学生だった、だが今彼はグラニウム王国の召喚部屋で勇者として召喚されてしまったのだ。落ち着きも無く辺りを見回す彰を見詰める二人の男が居る、一人はアレム•ノイド大臣、そしてもう一人がこの国の王ステイレイ•グラニウムであった。
 状況が把握しきれないまま彰は淡々と説明されている、魔物、魔族、敵国から国を守る為に召喚されたと。無茶苦茶だった、私利私欲の為だけに呼び出され、平穏だった生活から地獄へと叩き落されたのだから。
 彰は僅かばかりの金と剣を与えられ、協力者だと言われた一人の女性をパーティーに加えさせられた。
 彼女はベスタニル共和国から亡命して来たが、この国に入って直ぐに兵士に捉えられ投獄、勇者が召喚された場合パーティーに入る事を条件とし開放されたと言う、また彼女の首には隷属の首輪がされていた。彰は挨拶がてら彼女の素性を聞き出そうとしたが、細かい事は旅先でとはぐらかされてしまった。
 大臣の話しが一通り終わり、城を出た二人は先ず冒険者登録へとギルドに向う事にした。
彰「俺って勇者扱いだよな?勇者に冒険者としての登録って必要なのか?」
萌「ここまでくれば聞かれる事は無いでしょう、改めまして私の名前はベニスタ•ローラ宜しくね?因みに元の名前は櫻木 萌(さくらぎ もえ)でもここではローラって呼んでね?」
彰「え!!って事はお前も召喚者!!」
 声を荒げた彰の口を萌がシッと抑えると、淡々と説明を始めた。
萌「私は転移者です、ベスタニル共和国で転移されたのですが、共和国の方針に納得が行かず亡命、そして城で聞いた通りです」
 萌から転移と召喚の違いを説明された、召喚は何の成約も無くこの世界に呼び出す事が出来、また送り返す事も出来る。そして転移者はこの世界に転移される時に、強力な力を与えられる為に元の世界に戻るのはとても困難である。またその力の所為で転移直後に隷属の首輪を付けられてしまう。
 萌は3年前に転移され共和国で魔術師として教育されていた、力を得た萌は生命エネルギーを使い隷属の首輪を破壊、その後亡命したのはいいがグラニウムに入って直ぐに力尽きてしまった、魔術師として名が知れ渡っていたローラは直ぐに捕えられ拘束されてしまう。
 いつでも逃げ出せはしたのだが、勇者召喚の話しを聞き条件を飲む事にした、首輪はいつでも外せるらしいが「それは今後の彰の行動で決める」と言ってそれまでは勇者の奴隷を装って行くと笑顔で話して来た。
 奴隷制度に縁が無かった彰はあっけらかんと話す萌とは裏腹に、内心だけではなく表情も暗かった。

彰「さてギルドに来たはいいが、本当に勇者も登録が必要なのか?」
萌「えぇ、他の国への出入りは冒険者登録をしていないと面倒だからね?亡命者扱いされてしまうと奴隷商に売り飛ばされるのがお決まりみたいなのよ」
彰「だから櫻木さんは」
萌「二人の時は萌でいいけど、他に人が居る時はローラでお願い」
 二人は中に入り冒険者登録を済ませた、萌は魔術師として簡単に登録は出来た勿論名前はローラでだ、だが彰に関しては職業が勇者だから中々信じて貰えない、そこで萌が大臣から預った書状を手渡すとあっさり勇者として登録されたのだった。
彰「頼むよ、そんなのがあるんだったら初めから出してくれれば良かったのに」
萌「勇者がどれ程価値のある存在か知って欲しかったからね?」
彰「成程な?貴重だから受付は信じてくれなかったって事か···なぁ、それにしても人間っぽく無い人も居る様だが?」
萌「彰はファンタジーのアニメとかゲームとかは?」
 あると返事をすると萌は正にここはそんな世界だと言う、剣と魔法が飛び交う世界。そしてここには人語を話すのが人間以外に獣人やエルフに魔族まで居る。生物全てにレベルがあり自身を高める事も出来る、加えてこの世界で生きて行く秘訣は魔物や魔獣等から採取される石を売って生計を立てる事、更に自身のステータスを知るにはギルドカードを石碑に照合すれば確認出来る等を話してくれた。
彰「石碑ってギルドにしか無いのか?」
萌「石碑を良く見て?赤い石が埋め込まれているでしょ?あれは照合石って言うのだけれど、石にカードを照らせばステータスが浮き上がる様になっているのよ、だからあの石さえあればどんな場所でも照合出来るわ」
彰「照合石ってどっかで手に入れられるものなのか?」
 萌は小さく首を降ると滅多に出回らないと肩を落として言った。
 輝のレベルを上げるために二人で依頼の掲示板を眺めている、どうやらこの近辺ではゴブリンやコボルトと言った魔物が旅人を襲っているらしい、殆どが討伐依頼だった。
彰「そう言えば全然気にしてなかったけど、言葉や文字って元の世界と共通なのな?」
萌「それだけじゃ無いわ?街の外に出てみれば分かるけど植物や小動物も地球と変わらない、元の世界に魔獣を足したって所かしらね?」
彰「流石に3年もこっちに居ると落ち着いてるな?俺はまだ混乱しているってのに」
萌「直ぐに慣れるわよ?それよりこのクエストなんてどうかしら?」
 手始めにと言う事で一番ランクの低いスライム討伐を選択しギルドを出る時だった。
 「おい聞いたか?邪神国がたった一人の人間に壊滅させられたらしいぞ?」
 「ただの噂だろ?聖教会から離反した弱小国なんだ、教会に潰されたんだろ?」
 「馬鹿言うなよ、小国って言ったって今まで教会の攻撃を全て返り討ちにして来たんだぞ?そう簡単に潰されるかよ」
 「だったら何で壊滅したんだ?」
 「だからたった一人の人間に···たしか黒い魔神とか言ってた様な」
 「まぁ噂は噂だ、そんな事より早く依頼を受けに行こうぜ?」
 物騒な話につい聞き入ってしまった、萌に一人でそんな事が可能なのか?と聞くが萌は大きく首を左右に振り、全てのステータスが大幅に増加されていたとしても絶対に有り得ない、と必死な顔で言い返して来た。

 矢張り若しギルドで聞いた話しが本当だとしたらとんでも無い事の様だ、確かに邪神国は小国ではあった様だが、戦闘レベルでは大国に匹敵···それ以上でも可笑しくないらしい、そんな国がたった一人の力で壊滅する事など有り得ない、だが何の根拠も無しで冒険者が噂を立てる事も無いと萌は言う。そこで二人が出した答えは恐らく事実に近い、だから絶対に関わらない様に行動するだった。

 そんな魔神と対峙する事になるだなんて、今の二人には想像も付かないだろう。


 運命を変えてしまうその日はまだ·········

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