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『小説』永遠に宇宙に 完結編 ∼さよならからの始まり 絆は永遠に∼  序 章 

清明「そォではない!!確りと印を結ばなければ術は行われないと何度も言っておるではないか!!」
玄庵「す、すみません!!」
清明「ハァ······玄庵(げんあん)よ」
玄庵「はい」
清明「そなたには筋がある、だが何故今日に限って氣が散漫としておるのだ?」
玄庵「それは······申し訳ありません」
清明「玄庵よ······まァ良い、氣を集中させもォ一度印を結んでみなさい」
幻庵「分かりました」
スッ···シシシュササッグッグッグッ
清明「うむ···まァ良いだろう、玄庵よ」
玄庵「はい」
清明「長い修行に良く耐えて来たな?」
玄庵「師に追い付く為に」
清明「うむ、では本日から安倍晴明(あべのせいめい)を名乗るが良い」
玄庵「え?······それは」
清明「ハハハ卒業だ玄庵、いや今は清明であったか」
玄庵「そ、そんな···清明と言う名は」
清明「ん?不服か?」
幻庵「そォではありません」
清明「私はもォ若くは無い、印を結ぶにも体力がな?」
玄庵「ですが!!清明様がおらねば都は」
清明「そなたがおるだろ?」
玄庵「私にはまだ!!」
清明「そォだな?」
玄庵「でしたら何故私が!!」
清明「何故?···ふむ、それを考えるのも修行と言う事だ、良いな?日々の鍛錬を怠るでは無いぞ?」
玄庵「せ、清明様」
清明「清明はそなただ、私はただの老いぼれ隠居じゃ隠居、ワッハッハッハッハ」
玄庵「清明様······」

清明「久しいな?清明、ふむ日々の鍛錬は確りと行っている様だな?」
玄庵「お久し振りです、太上老君(たいじょうろうくん)様の指導の賜物で御座います」
清明「ハハハ太上老君と来たか、確かに若き頃は老師の様にと目指した事もあったが···フフフ私には能が足りなかった」
玄庵「そんな事はありません!!」
清明「良いのだ清明よ、己の力は己自身が良く分かっておる」
玄庵「·················」
清明「老師、太上老君を目指し日々鍛錬を続けていたのだがな?当時氣が散漫しておったのか···私が未熟過ぎたの、だろォな?殺める者を間違ってしまった」
玄庵「そんな事が」
清明「その時だな?私には老師にはなれぬのだと」
玄庵「で、ですが老師が駄目だとしても張道陵(ちょうどうれい)になら」
清明「張道陵か·······清明よ、上を目指す事は間違いではない、目標となるものがある方が成長の伸びも早い」
玄庵「はい」
清明「だが老君は老君、天師は天師···そォではないか?」
玄庵「··············」
清明「私は私、そなたはそなたと言う事だ」
玄庵「ですが···私に取ってアナタは老師です」
清明「フフフ好きに呼べば良い、して?今日は何故私の所へ来たのだ?」
玄庵「それは」
清明「ただの挨拶回りでは無いのだろ?」
玄庵「えェ···最近都に外傷の無い変死体が増えていまして」
清明「ほォ」
玄庵「私は何人か見たのですが」
清明「人のものとも妖かしでも無い」
玄庵「はい」
清明「ハハハはっきり申せ」
玄庵「はい······私には印に寄る怨だとしか」
清明「ふむ、それを結んだのか私だと言うのだな?」
玄庵「何故ですか!!何故老師がその様な事を!!」
清明「······そなたは何故私が隠居の道を選び、そなたに安倍晴明の名を与えたのか、その答えは見付ける事が出来たのか?」
玄庵「いいえ、まだ」
清明「何だ、鍛錬は怠らずに来たと言うのに、肝心の答えはまだであったか」
玄庵「·········申し訳ありません」
清明「フフフ素直に申せ、そなたが気付いておらぬとでも思っていたのか?老いはすれど私はそなたの師だぞ?」
玄庵「··············」
清明「あの頃······幻庵として修行に励んでいた頃だ、暫し全く修行に集中出来ぬ頃があったな?その頃に気付いたか」
幻庵「はい、老師から僅かですが黒い何かが」
清明「それは闇だ」
幻庵「闇?」
清明「陰陽とは陰と日、闇と太陽」
幻庵「闇と太陽ですか」
清明「うむ、陽の力が強ければ正しき道を行けるが、陰の力が強ければ誤った道を進んてしまう···私の中に陰が存在する事に気付いた時、清明の名をいつでも捨てる覚悟は出来ていた」
玄庵「ですがそんなもの老師ならば」
清明「ハハハそォ深く考えるではない、私は陽の下に居る事に疲れただけだ」
玄庵「老師···殺める事は」
清明「安倍晴明よ、私が何故そなたに名を譲ったのか、その役目の意味を考えるのだ」
玄庵「老師は初めから」
清明「気に留めるでない、全て己の未熟さ故の事、定めだと受け止めておるわ」
玄庵「どォシテモ私が」
清明「自害を選ぶとそなたが苦労するぞ?」
玄庵「妖かし···ですか」
清明「力の無い者が妖かしになれど大した事は無い、だが私はどォかな?一筋縄では行かぬぞ?」
玄庵「心得ています」
清明「フフフ正直なヤツだ」
玄庵「老師ほどの力があれば闇などいとも簡単に」
清明「そなたが思うている以上に闇とは厄介なものだぞ?フフ私はいつでも準備が出来ておる」
玄庵「······三月、三月後にまた来ます、老師ならば必ず闇など打ち払えると信じています···では私はこれで」
スクッ、スタスタスタ
清明(甘い······が、それがそなたと言う事か)


清明「今日(こんにち)で清明の言うた三月だが···フフフしぶといヤツだ、そんなに私の中が居心地良いのか?」
ゴロゴロゴロ···ピシャ!!ドドォ∼∼∼∼∼∼∼ン!!
清明「庭に落ちたか、ほォれ見ろ、清明だけでは無く天まで怒ォておるではないか、フフ全く困ったヤツじゃ·········む?何やら庭から気配が」
スクッ、スタスタスタ···スゥ∼∼∼
清明(なんだあの黒い霧は······今の鳴神で······む!!渦を巻き始めた)
清明「この気配は渦の中から······まさか私を呼んでいると言うのか?」
スタスタスタスタスタ·········フッ!!
玄庵「え!!な、何故急に!!」
ダダダダダ、バン!!タッタッタッタッ
玄庵「老師!!どこですか!!清明です!!返事をして下さい!!何があったと言うのですか!!老師!!」
バン!!
玄庵「······居ない」
玄庵(何故突然老師の気配が消えてしまったのだ)
玄庵(自害は考えられない···妖かしにもなってはいない·······老師の身に何が)

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