勇者または勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断わりました 10話
強力な助っ人
彰達は7日かけてようやくヘライ村に着いた、村人はまだ残っている、だが度重なる襲撃で村の修復が間に合っていないのだろう、住む所の確保でやっとの様子だった。
彰「何度も襲撃されてんだろ?何で村の人達は逃げないんだ?」
萌「逃げれないのよ、作物だってある、それに他の村だって襲われているのよ?どこの村が受け入れてくれるの?」
彰「罪も無い人達をこんなに苦しめて······許せねぇ、例え同郷だとしてもこれはやり過ぎだ」
萌「斬れるの?」
彰「人殺しはもう人じゃねぇ!!斬る!!」
萌は彰の熱が冷めない内に村の周辺に陣を張った、一番確率が高い場所に彰と萌そして二千の兵、戦闘の際逃げると思われる場所に一万、その間に其々四千ずつ。
タイミングが良いのか悪いのか振り分け後直ぐに魔人が現れた、その数6体。
彰「たった6体かよ」
萌「侮らないで!!1体でもS級モンスターに匹敵するから!!」
彰「マジかよ、S級が6体って······だから二万もの兵士を動員したのか」
萌「いけない!!村人が襲われている!!今回の目的は作物じゃない!!」
彰「おいおい村人目当てかよ!!全員死ぬ覚悟で魔人を斃せ!!」
一斉に魔人に向かう彰達、初手は矢張り彰だった。しかし名刀と謳われているデュラハンにS級冒険者の彰の力の一振りを魔人は片手で受け止めた。強烈な一撃が彰を襲い吹き飛ばされると、笑を浮かべた魔人がデュラハンを投げ返して来た。
彰「ず、随分余裕じゃねぇか」
萌「格下に見られたわね?」
彰「テメェ!!元人間だろうが!!何で人殺しなんかしてんだよ!!」
萌「魔人だからでしょ?」
彰「地球に居た時はそんな事してなかっただろうが!!」
萌「魔人化と共に記憶を無くしているからでしょ?」
彰「さっきから煩ぇよ萌!!お前も攻撃しろよ!!」
だが萌は目の前の敵より他の辺りを気にしている、何か重要な事を見落としているかの様に、そしてある事に気がついた。
萌「可笑しい」
彰「何がだよ!!」
萌「他に配置させた兵士が一人も来ない······まさか!!」
萌の予感は的中した、記憶を失ったとは言え元人間、萌の作戦は魔人に気付かれていた。今正に配置させた場所では戦闘が行われていたのだ。
萌「しまった!!兵を分けた事が裏目に出た、このままでは全滅する」
彰「そんな事にはさせねぇ!!」
萌も必死に対抗するも魔人の強さは予想以上で見る見るうちに兵士の数が減って行った。
戦いが始まって十数分が経った頃、ようやく彰が1体目を斃した、と同時に3体の魔人が現れた。
萌「魔人!!」
彰「1体で苦戦したのに3体もかよ」
萌「あの位置は四千の兵士を···早過ぎる、四千もの兵士がこんなに早く」
萌が愕然とする間も無く、新たに3体の魔人が現れた。この時点で八千以上の兵士が死んだ事が確定していた。
彰の闘志は凄まじかった、元同郷である事、村人を襲っている事、兵士を殺された事。3体目をやっと斃した時だ、一万の兵士を配置した場所から1体の魔人が現れた。それと同時に魔人達は一旦戦闘を止め現れた魔人に近付く。
彰「また来やがった···でも1体って事は2体は斃したって事か、やるじゃねぇか」
萌「そうだと良いのだけれど」
彰「え?どう言う意味だ?」
萌「あの魔人から凄い氣を感じる···多分あれがリーダーだわ」
彰「まさかとは思うけど、アイツが一人で一万の軍隊を斃したってのかよ」
萌「一人と言って良いのか分からないけどね?恐らく彰の予想通りだと思う」
するとその魔人がゆっくりとこちらに向かって来た。凄まじい気迫にデュラハンを握る力が上がる。
要「初めまして勇者御一行様、私は神野要(かみのかなめ)元地球人で元大学院生の23歳で御座います、短い時間ではありますがお見知り置きを」
彰「魔人が喋った!!」
要「おや、可笑しな事を言いますね?魔人とて元は人、人語くらい話せますよ?」
萌「元人間なのにどうしてこんな事を!!何で人を襲ったり殺したり出来るのよ!!」
要「この世界での殺人は日常茶飯事では?山賊、盗賊、強盗、強姦、奴隷を殺す事等当たり前、そんな世界で私達がやっている事がいけないと?」
要の言葉は筋が通っていた、ただそれはこの世界での話しだ、萌や彰は元の世界での常識で話しをしていただけだった、この世界では要が言っている方が正しい、確かにそれらは日常当たり前の様に行われ、度が過ぎれば粛清する。ただそれだけの事だったのだ。
要「勇者様とそこの魔導師様は元は我々と同じ世界の住人ですね?···そうですかアナタ達は成功者ですか、それもとびっきり最高のギフトを貰っている」
要から凄まじいオーラが流れ出した。
彰「お前元地球人ならこれが正しい事なのか理解出来んだろうが!!何でこんな酷い事するんだよ!!」
要「こんな酷い事?では勇者様から見て私の姿はどの様に見えていますか?」
その言葉に彰は口を詰むってしまった、彼らは失敗者言わばこの世界での犠牲者だったのだから『復讐』彰と萌がそう考えた時要がそれを言葉にした。
要「復讐ですよ、私達が行っている事はね?そうでしょ?何事も無く平穏に生活していた矢先、突然こんな世界に呼び出され変な薬を飲まされたと思ったら奴隷にされ、挙げ句の果てには魔人化して捨てられる、我々はゴミ以下の事を虐げられて来たのですよ?あなた方の様に成功者なら元の世界に戻る事も出来るでしょう、ですが我々がこの姿で戻る事は出来ますか?あなた方が若し失敗者であったらどうなさいますか?」
二人は何も言い返せなかった、要達が行っている事よりも要達に同情が生まれてしまったからだ。要の言葉を切っ掛けに他の魔人達が残りの兵士達を始末して行く、だが彰も萌も要の前から動く事は出来なかった。
要「私の言葉を理解して貰えてとても喜ばしいですよ?ですがあなた達二人も私達の憎む対象となっています、成功者······温かい食事を食べ、綺麗に身を着飾り、雨風の当たらない家に住み不自由の無い暮らしをしている」
要は一呼吸開け再び話し始めた。
要「特にあなた方は最高の恩恵を受けて」
輝「おーい、そんなクズの言い訳なんか聞いてるなよ?どんな事情があろうがやっていい事と悪い事がある、そいつは腹癒せにこの世界のルールを利用して好き放題暴れているだけだ」
萌は「黒い剣士!!」
彰「セシルちゃん!!」
辺りを見回すと残ってたのは数人の兵士のみ、他の魔人は輝とセシルによって斃されていた。
要「誰ですか?···と言うかその話し方、あなたも元地球人ですね?転移者······いや召喚者ですかね?」
輝「いや、俺はどちらでも無い」
萌「え!!」
要「そんな筈はありません!!こちらの世界の者がこれ程強い訳など」
輝「そうか?セシルはこの世界の人間だぞ?」
萌『どう言う事?彼の言っている意味がさっぱり分からない、でもあの口振りなら元地球人である事は間違いない、なのに転移者でも召喚者でも無いだなんて』
要「あなたは何者ですか?話しを聞いている限りあなたも元地球人のようですが?」
輝「まぁ死に逝くお前には教えてやっても良いんだが、聞かれたく無いのが二人程居てね?」
要「成程、ではその答えを聞く為に少し待っていて貰えますか?邪魔者を消して来ますので」
彰「な、何の話しをしてんだ?邪魔者の二人って」
萌「黒い剣士!!何故私達に敵対するの?あなただって成功者じゃない!!それもとんでもないギフトを貰っているのに!!」
輝「確かにギフトは貰ったのだろうな?だが俺は成功者ではない、そもそもラベリアルの花の蜜なんか飲んで無いし」
要「その理由も後で私が聞いておいてあげますよ?」
物凄い速さで彰達に襲い掛かる、突然の攻撃に二人は全く対処出来ていなかった。
ガキィ!!
金属音が響く中二人が目を開けると、要の一撃をセシルが受け止めていた。
セシル「輝様!!こんな時に悪巫山戯は止めて下さい!!私は萌さん達を守ります!!」
彰「セシルちゃん」
萌「輝って···やっぱり元地球人」
セシル「はい、ですが輝様の言っている事は本当です、輝様は転移者でも召喚者でもありません」
一旦距離を取った要がセシルの強さを警戒した。
要「どう言う事ですか?これ程の強さを持った女がこの世界の住人?そんな事有り得るのでしょうか」
輝が止める前にセシルは全てを暴露してしまった。
セシル「私は輝様のギフトの力によって能力が上がっています、この世界の住人ではそんな事出来ませんし、ここまで力を付けれるのは一握りしかいないでしょう、元奴隷の私には尚更です。それと輝様は転生者です、あなた達の様に帰りたくても帰れない、それこそ強制的にこの世界で暮らす事をさせられた犠牲者です!!そこの魔人!!あなただって帰ろうと思えば帰れる人なのです!!輝様の悲しみに比べたら全然大した事が無いのにこんな馬鹿げた事等しないで下さい!!」
輝「ったく、全部話しやがって···今回だけだぞ?面倒事に巻き込まれるのはごめんだからな?」