性の歴史(モナリザ・オーヴァドライヴ) 川柳100句
儒艮みよ父のセクシーコマンドー
海豚さかのぼるカフカの不眠都市
酢のものの丸ビルにくばられた痕
ラバウルにふざけていない濡れおかき
千切れたフィルム月下にすがる乞食
技師の愛した数字なにも書けず
録音室をでると飛翔体
かぶとがに万有の引力尽きて
無人ビル百人一首してしまう
プリキュアに擬して馬頭観音像
にせもののおこさまランチ渓渡る
地母神のただれて加藤醤油店
三河屋を渦状銀河の心として
丸亀のマルムスティーンの反意識
沼津市の沼に豆乳時代かな
三重県に三重をなすトイザらス
いのまたむつみの意識に冬の蠅
宗純がヘクトパスカルした後で
渋谷区の名前がせがた三四郎
魚醤の虚体にアメリカ選挙戦
白痴としての五右衛門のドラミング
Ω社にマルグリットの皿重ね
弟に中量級の章魚の群れ
うろこ屋の軍人将棋規のゆらぐ
髪飾り放尿意識あらためて
つくばいに挑む東京スワローズ
ゾーン拡大豆乳屋トムのうた
いちびりてトマト襲来前のこと
押し花でいっぱいの書に自己模倣
唐紙にしぼる阪神マヨネーズ
十月に生命圏をでる扉
句風かわりいまのミルコ・クロコップ
脳内の芥川家のゲルとして
曙パンチはずれれば象徴詩
サマンサの知能の限り地曳網
鳩サブレ警察が焼く鳩サブレ
言論のはじまりに言うエル・グレコ
破邪の書にマタマタの手ぬぐい書かれ
存在の動詞グループから訣れ
スカトロジストの卵に埋まる浜
枯葉目にヨーダに水をこぼすのみ
金隠しリアル芹澤鴨とあう
国民の森田を容れる赤バケツ
ばってらに戦意昂揚させる自句
やばからん一言主の万華鏡
パズル嵌め何ものでない浜早智江
麒麟児が狂うアントワネット網
無投票選挙スプーン曲がりけり
倭人来てそのまま帰るカルピス屋
数列にハンナの魚肉ソーセージ
不眠者狩りにつかわれる男の娘
レアチーズケーキ行為者の凹凸
足袋やぶるこころ運命研究所
借景に野犬精液ほとばしる
はとバスを焼けば地上には歯車
ナウシカが西瓜工場から出ない
アンコール・ワットの鯔のかたちして
髪を刈る歴史事実のない街で
明晰にジャズ大名の首を伐る
砂浜の戸川昌子のくずれる日
セーターが遍在するかのど仏
姉の名がグラタンだった皿山家
猿山の冷凍庫からだす精子
弟と大猿映画くろくぬれ
メンズタキシードでの火の七日間
寒い日の日記に書いてある酵素
また盆地つづく集合無意識や
聖なるか卑劣なひとのおでん鍋
夢のそと人事課という殺陣がある
時計撫ずハイデッガーの蟬絶えて
ちちおやが父になるまでまきもどし
カプセルの水晶宮をころがせば
松竹のロードムービーにもほくろ
容疑者の卵子に荒木又右衛門
丸木舟こぐベリーダンサーの裔
真景にちかい春日野部屋性器
私人らにタツノコプロを憑らせて
海豚屋と対称をなす糸胡瓜
点対称のまるごとのパンを踏む
呪われよ蛹高校新月部
残心のダーティハリー鍋たたく
いちねんのあいだ脳よりゴリラ消ゆ
冬桜虚数本きる穢麻呂
水爆の破裂芸人卵子抱き
凍蝶の名がおもしろくない版画
あきすとぜねこ銅貨まで辿りつく
コロコロの背表紙を這う外来種
機械語に万里小路がおちてゆく
死に急ぐ鯨たちとの魔羅くらべ
わだつみのこえにマーダーライセンス
投企してパンダならざる糸パンダ
大豆腐一個がふるえ宇宙論
モヒカンの教授役へと紙つぶて
なんこつの性の歴史を描き終える
ギネスブックオフ凍蝶あらわせば
六階のうえに七階大魔王
股のぞきブラヴァツキーのさいたま市
黒犬の頭上に揺れる五円玉
ぷよぷよにたくさん落ちる五平餅
眼の壁をびっしり埋めるなまこの眼