天地創造(アイ・キャン・フライ) #long version 川柳200句
——2024年11月16日−18日、名古屋旅行のつれづれに
Ⅰ.創造開始 一〇〇句
父という酢味噌の腐る虹の國
父の名を豆腐潰しておもいだす
朝焼けて父の陰茎ぶらさがる
散り散りにレム睡眠の家具屋たち
ユリイカをかたるマルチン幼稚園
ホルモンをうばって逃げる柴犬屋
神童のなますを縦に裂く仕事
バイク屋に貼りついている文字の渦
皮切りにきのこ図鑑の目次消え
不老者をのせて無人のバスなりき
夕顔がただそこにあるベルマーク
元締の出口に酸が置いてある
胎盤をもらい現実ピクニック
チンチラがともしつづける非常灯
ぶな荘に灯火管制する夢野
明け方の油淋鶏の時間窓
ソフト麺ほぐれ徳川超幕府
天皇のもや晴れてゆくコマーシャル
うどん屋にななこSOSの札
言わ猿のハンディキャップ短歌会
アパシーのとぐろほどける闇の都市
単純に玄米あつめ決死圏
トンネルに宅浪生のあとを尾行け
馬頭神インターという意味作用
コーヒー屋神のかたちを彫りながら
まじりあう一億人のすもうとり
下り坂ばかりの街に砂の本
カリメロの時間とともに岐阜を過ぎ
大都市に千人針を借りて貸す
バス走るアンドロメダを焚きあげて
推定のメロスのいない都市へ着く
漁船溶けてから筋肉少女帯
国旗にもまざまざとある大和芋
コマ送る鴉のつばさウォー・ゲーム
海賊に前置詞ひとつあるばかり
アルパカの世代交代する遺跡
納棺の部屋にさえずる青い鳥
情報に餓える経度のきりたんぽ
花屋にてもんたの教祖誕生す
地下街にれんげのひとつひとつかな
猿地獄ありせば時盤内ひろば
胎内の犀をかかえてゆくふたり
午後の午後うめつくすなりフラミンゴ
延々と音大生のみる仔象
雨の日の豹のいちぶとなる禊
麒麟だれも視ざりにけり冬暑し
獅子に筒井康隆集改版す
助六と河馬をつなげる俊太郎
マルクスと動物園のにおいして
どこまでが豹なのだろう銀河雲
母星にはここにしかない糞がある
白熊のかたちがまさに五・七・五
パロールに警官隊のババを抜く
地下鉄の終わりに止揚する赤毛
社会詠杏仁豆腐駅崩れ
名古屋市よわれのマカロニ・ウエスタン
平和園ありて精神分析市
非煮沸の都市をゆきかうラッパ隊
東山公園前にまだ鼓膜
群盲のアルマゲドンをつつむ皮
ドリル市の喩えばなしに神の主語
夕陽なき街の自転車屋煌めく
フリスクを市民が砕く実話集
県歌なき県の敦盛舞うすがた
レーサーに言い尽くせない尾張藩
永遠に永遠と云うひつまぶし
うつくしいひとがボンベを破るまち
アダム死すラジオゾンデをみていると
風果つる街にカフカの居た記憶
サルトルの誤字がみつかる中京部
樹のしたのサナトリウムか犀のこと
細胞がただふりつもるドリトル市
彫像に音ありぬべし冬暑し
滝沢の家のトリックアート棚
神罰のないほうへ来て夕焼市
フラミンゴ句会にみえる句またがり
肉ばなれ妻のサーガがはじまった
超季ガス十一月の蚊に刺され
テレパシー遮断石臼おろすまで
幹線の崩れて何が碁気カルト
古賀メロディだけの渡海をしてしまう
茶柱が分子分母の宿に立つ
私小説作家のひどいごまだんご
薔薇を買う妻にコナミの薔薇みせる
とりもちを失くし夕陽のあふれでる
煮卵にみえないカミュ、アルベール
人工語みんなのうたが造られる
ブニュエルの訛伝貝類物語
うつくしいひとから左辺から消える
大都市にロート製薬への短歌
散文のかぎりをつくす毒蝮
河馬をみていなくて都市の架空なり
ローファイのそぼろ男子とかたりあう
氷点を超えてむらさき芋の降る
きしめんが浮かぶロリータファシズム史
カーネルに流砂の街でであわない
風をみてあらゆるものの警部型
名古屋市にダンボの世紀痕の釘
マスケット銃をつぶやく男子館
うつくしくなるひとの縫う象印
Ⅱ.創造継続 一〇〇句
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