オートミール/あるいは記憶の痕跡の痕 写真川柳24句
「わたし——わたし、あの、まだいまのところよく分からないんです
——少なくとも今朝起きたとき自分がだれだったかは分かってるんですけど、それからわたし、何回か変わってしまったみたいなんです」
——M.McLuhan
川 柳
および
写 真
妻消えていまテトリスが降ってくる
バカボンがネット社会を予言して
人体にカバーソングが響くなか
ゲーデルを妊婦に換える暗喩唄
惑星のようにインキを乞う儀式
存在と右脇腹の林檎在り
意思の色たとえばカミュ捜査班
ほたるいかまでの光年そぼつ雨
島唄がゾンビの劇の劇中歌
特性のない声優が刺す馬肉
ルワンダの午後が間もなくくる歌劇
さびしいという脾臓から三色旗
無意識の壁に無塩のバター塗る
作戦で伊豆の踊子号降りる
ハムスター養殖員の帰る土間
教頭が決めたマドロスパイプ法
振袖のスパイが禅を組んでいた
エロチック街道筋のミートパイ
人間がいつ辿り着く発電所
太鼓打つたびに縮んでゆく宇宙
ひらかれた斧・琴・菊の柄の傘
Lのみを記す人間昆虫記
人名詞大辞典から引く時間
模型屋の模型をつくるくもり空
もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、