腋と教育とアコーディオン 川柳35句
——即ち、俺には俺の虚構しか書けない。現実を前にした時、この世の〈メタ・フィクション〉という型式が、単なる視線を逸らす手法、言ってしまえば枷を嵌められた囚徒の喘息でしかないことが判然としたのだった。ならばメタではない、それぞれひとりひとりに隔絶された現実を書くことのみが、今の「わたし」が可能な行いであるはずだ。それは現実では無いと云うのか。ならば繰り返す。即ち、俺には俺の虚構しか書けない。
——2021.2.24 日本
鷺宙に書かれたアンチ・オイディプス
乳母に花贈る計画外の壊死
ベーシスト解体新書意訳して
夜光虫ゲームバランス崩壊し
くじ既にバレー選手の指紋つき
サロマ湖とバイバイキンを復唱す
コンビニとコンビニ間のみんな死ね
拳銃をくれ以下の句に意味がない
季語もなく愛玩犬がころされた
貼り紙を柳生一族から斬られ
包丁の盗聴機へと囁けば
人間が不幸になれる缶を蹴り
珍敬語のこし王様消えなさる
カルト教団からつくられた市の模型
哲学の路に人差指が在る
死ぬ前に狩野英孝へ出す葉書
小脳もこわれていった焼烏賊屋
過食症わずらう夜に栗鼠を飼う
人類をドーピング選手が殴る
桃を聴くソナー開発録ひらき
草競馬社団がおれを死ねと云う
おそ松を観てギロチンを試作中
シベ超に卵を孵す春の雪
園員がマリオの死体片付けて
武蔵野のボタンを押して二郎鳴く
腺液のなかにフーコー像が立つ
貝原に立脚をする島のハム
針金をむすばなかったハイジ軍
上野から上等兵の下腹撮る
素粒子がチーズバーガー屋を過ぎる
赤井戸と関係もなく犬が喰う
人間の死後に改造する手斧
ラスカルとその他を憎む魔王たれ
幕張に漂流民の長い爪
後ろからゲオの課長が追ってくる
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