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G-MoMo~銀暦少女モモ~:クルちゃんと惑星ジェルダ Fractal.3
宴が始まった。
歓迎の宴や。
ウチとリンちゃんの。
原っぱへと座り込むウチとリンちゃん……と、クルちゃん。
その背後にドデンと座るロッポちゃん。
各々の前には皿代わりの葉っぱが敷かれとって、その上にはフルーツやら肉やらの質素な御馳走や。
うん?
肉、どないして焼いたん?
ま、ええわ★
コレ、おいしい ♪
ほんでもって、目の前では数匹のちっこいポヨコちゃんがリズミカルにポヨコンポヨコン跳ねとる。
どうやら歓迎のダンスみたいやね?
と、ややあってクルちゃんが質問してきた。
「陽ノ咲モモカ、天条リン、何で追って来た?」
「いつも通り〈イザーナ〉と〈ミヴィーク〉で追って来たよ?」
「違う」
違わへんよ?
「宣言したはず──今回は、私一人で行く──と」
「リンちゃんや ♪ リンちゃんが行こう言うたねん」
「ふむ?」
ジィー……と、リンちゃんを傾視する。
その視線に堪えきれなくなったんか、リンちゃんはしどろもどろに言い訳を取り繕った。
「ア……アアア……アタシは別にアンタなんか、どーでもいいんだから! ただ、フレッシュなパパイヤ食べたかっただけで……」
「マンゴーやないの?」
「……う!」
言葉詰まったよ?
気まずそうに詰まったよ?
何で?
「そんな事より! アンタこそ、どーいう事よ! この惑星に高度知性体はいないんじゃなかったの! 何よ、アイツ?」
ビシィ指差すのは、向こうの草原でポヨコちゃん達に指示を出しているメイ子ちゃん。
あんなん見てると、たぶん偉い人やね?
あ、コッチ気付いた。
ニッコリ笑顔で、ウチに掌を振ってはる。
ほんでもって、隣のリンちゃんを軽く見て……小馬鹿にした蔑笑飾った。
「ムッッッカァーーッ! 何よ、アイツ!」
「彼女は〈ブロブベガ〉の〝ラムス〟──この惑星ジェルダに生息する〈ブロブ〉達の女王」
「ハッちゃんみたいなもん?」
「陽ノ咲モモカ、並列に考えてはラムスに失礼」
それ、ハッちゃんには失礼やないの?
「だ~か~ら! その〈ブロブベガ〉って何だッつーのよ! 高度知性体じゃん! アイツ!」
「彼女は特異例。そして〈ベガ〉とは、正式には〈ベムガール〉の略。〈宇宙怪物〉と遺伝子レベルで融合して人間形態へと新生した〝宇宙怪物少女〟の総称」
「宇宙人とは違うの?」
「異星間交流が確立していなかった旧暦ならいざ知らず、この銀暦に於いては生態的差別化定義は不可能と考えていい。両者の定義差は、偏に発生プロセスの分類概念にのみ依存している。よって、同義と考えても支障は無い」
「ハッちゃんみたいなもん?」
「陽ノ咲モモカ、同義に分類してはラムスが不憫過ぎる」
ハッちゃんは可哀想やないのん? それ?
「でもさ? 〈ブロブベガ〉とか言いつつも、アイツ〝人間〟じゃん? 〈ブロブ〉の要素ゼロじゃん?」
「天条リン、あの形態は〝地球人〟をベースとした〝擬態〟に過ぎない。本来の彼女は〝人型フォルム〟を形成した〈ブロブ〉そのもの」
「ふぅん? 要するに〈変身〉ってか?」
「あ! そう言えば、ウチの事〝ヒメカ〟言うてたけど……誰と勘違いしてはったん?」
「〝日向ヒメカ〟とは、旧暦時代に彼女が溺愛していた地球人。共に〝家族〟として生活していた」
「地球にいたん?」
「そう」
「旧暦に?」
「そう」
「何歳だッつーの! アイツ!」
「天条リン、そもそも〈ベガ〉は〝地球外生命体〟に分類される。よって〝地球種子型人類〟の寿命概念は適用されない」
「その〝ヒメカ〟いう人、そないにウチと似てたん?」
「似ていない」
「ふぇ?」「は?」
「ただし潜在的雰囲気は似通っていなくもない」
「潜在的な雰囲気って、よく〝芸能人オーラ〟とか呼ぶアレの事なん?」
「そう」
「んで? アイツってば、ずっとあんな性癖なワケ?」
「そうではない。確かに素地としては〝日向ヒメカへの異常な溺愛感情〟を抱いていたものの、誰彼構わずではないし、あそこまで壊れ……過剰ではなかった」
「……アンタ、いま〝壊れて〟って言い掛けたわよね?」
「言っていない」
「せやったら何で、あんなに過剰になったん?」
「断定は出来ないけれど、人恋しかったのかもしれない」
「ふぇ? ラムスちゃん、寂しいん?」
「旧暦時代、彼女は地球で〝家族〟となっていた。銀暦に於いて古郷〈惑星ジェルダ〉の女王と従事しているものの、高度知性体との交流接触は喪失している。永い歳月を鑑みれば、ホームシックにも似た虚無感が萌芽していても不思議ではない」
「そっか……寂しいねや」
そんなん聞いたら、ウチらかて同情涌く。
孤独なんは辛いよ?
心の風船パンパンなって苦しいよ?
「そういうワケで……陽ノ咲モモカ、今後は彼女の為すがままになってあげて欲しい」
「絶対イヤや!」
無垢な瞳でクルコクンして何言うてんの?
それとコレとは別問題や!
「御話が弾んでますわね?」
ややあって、ラムスちゃんが合流してきた。
「どうですか? モモカ様? 私の作った〝北欧風デミグラスソース煮込みハンバーグ〟は? 御口に合いまして?」
「うん、コレおいしい ♪ 」
「あぁん ♪ 幸せですわ~ ♪ 」
「ま、未開の惑星にしちゃ、予想外の御馳走よね」
「少し黙っていて頂けます? そこのモブ女?」
「はぁ? フ……フフ……主役のアタシに向かって〝モブ女〟とは……いい度胸してんじゃない! アンタ!」
主役、ウチ……。
「上等だーーッ! 殺ってやろうじゃないのよ!」
リンちゃんの勝ち気に火が着いた!
おまけにフリガナ違う!
アカン!
相当、頭に血ィ昇ってる!
そんな殺伐としたん『闇 ● 』だけで充分や!
「リンちゃん、ケンカはアカン!」
ウチ、慌てて腰を抱き押さえた!
「は~な~せ~ッ! モモ~ッ!」
「ふぐぅ! ア~カ~ン~ッ!」
「陽ノ咲モモカ、そのまま投げ捨てれば〈フロントスープレックス〉へと発展する。意識を果てさせるのに効果は抜群」
「せやの? せやったら、せーの!」
「何が『せーの!』だーーーーッ!」
「ふぐぅッ?」
ハリセンバチーーンや!
「ぅぅ……リンちゃん、痛いよ?」
「潤々しながら『痛いよ?』じゃないッつーの! この脳ミソ新日娘! だいたい、クルもだ! 妙な提案すんな! このアーパー、すぐ鵜呑みにすんだから!」
リンちゃん、あんまりや!
と、不意に「よよよ」と泣き啜る声。
……ラムスちゃんやった。
どないしたん? 急に?
「ひ……卑怯ですわよ!」
「は?」「ふぇ?」
「モモカ様に抱きつかれる様を見せつけて、仲の良さを誇示するなんて! 初対面の私が不利なのは明白ですわ……グスッ」
「……アンタ、いまの流れ見てた?」
「ハッ! そうですわ! 全身〈液状体質〉の私ならば、投げ捨てられても平気……何度、脳天から叩き落とされてもノープロブレムですわ! 抱きつかれ放題ですわ!」
変な着地した。
ほんでもって、聖母のような慈しみでウチへと両手を広げた。
「さあ、モモカ様♡ 思う存分、私に〈フロントナンタラ〉を仕掛けて下さいませ♡ 」
「イヤや」
「グス……ぅぅぅ……」
「殺人技回避したのに、地べたに泣き崩れてんなッつーの!」
ウチ、この人少し苦手かもしれへん……。
「ところでラムス、アナタと話がしたい」
顔色ひとつ変えんと、クルちゃんが切り出した。
それを受け、ラムスちゃんの雰囲気がスッと引き締まる。
「ま、そうでしょうね。わざわざ貴女がいらしたという事は……。よもや懐かしい顔に、こんな形で再会するとは思ってもいませんでしたけれど」
「何よ? アンタ達、古くからの知り合いなの?」
リンちゃんの質問に、ラムスちゃんの温顔がニッコリと回答。
「ええ、そうですわよ? モブ女?」
……毒吐きよった。
「上等だーーッ! このスライムメイドーーッ!」
「ふぐぅ! リンちゃん、ア~カ~ン~ッ!」
「放せーーッ! モモーーッ!」
「ぅぅ……あんまりですわ……また抱きつかれる様を見せつけるなんて……ぅぅぅ」
「このカオス、エンドレス?」
クルちゃん、そう思うなら何とかして!
呑気にクルコクンしとらへんで何とかして!
「では、私とラムスは対話の為に席を外す」
「何よ? 此処ですりゃいーじゃん?」
「天条リン、その申し出は却下。生憎、今回はラムスとマン・ツー・マンで話がしたい」
「はぁぁ? アタシらに聞かれたくない秘密事ってか!」
「そう」
「……迷い無く肯定したわね、アンタ」
「え……ええやん、リンちゃん? 久しぶりの再会で、きっと積る話もあんねんよ?」
「無い」
クルちゃん、淡白に否定した。
ウチ、庇ってあげたねんよ?
「モモカ様? 私がいない間、寂しいでしょうけれど、少しだけ御待ちになっていて下さいませ? すぐに戻りますから ♪ 」
別に寂しないよ?
と、これ見よがしにウチの肩を抱き寄せるリンちゃん。
「ほれ? さっさと行けッつーの? シッ! シッ!」
野良犬扱いに払いはった。
「私のモモカ様から、その雑菌まみれの手を御離しなさい!」
「へへ~ん ♪ アタシとモモは一緒にシェア食いとかしたりする仲なんだもんねー ♪ アッカンベロベロベー★」
「な……何ですって! 不潔! 不潔ですわ! もしも私のモモカ様が、変な感染症に掛かったりしたら……ッ! モモカ様、この性悪バイ菌女と御別れになるべきです! いますぐ! そして、パートナーには私を!」
「イヤや」
「……ぅぅ……あんな雑菌バイ菌モブ女に負けるなんて!」
ラムスちゃん、また泣き崩れはった。
「カオスは、もういい」
醒めて纏めるクルちゃん。
「という事で……陽ノ咲モモカ、面倒を起こさないで、おとなしくしているように御願いする」
「はーい★ うん? 何で、ウチだけなん?」
「天条リン、陽ノ咲モモカが面倒を起こさせないで、おとなしくしているように監視を御願いする」
「あー……まぁ、尽力はしてみるわ。うん」
「何で、ウチだけなん?」
そんなんしてたら、またまた近くの繁みがガサゴソ。
全員がハッと注視した。
このパターンは、また誰か来る。
「今度は何よ? 何か引き寄せる電波でも出てるワケ? この集落!」
「失礼ですわね、モブ女。私の村に、そのような怪しい仕掛けはございません」
「どうかしらねー? 何たって〈女王様〉が〝変態〟だし? 『類は友を──』で、変人呼び寄せてるんじゃないのー? ア・ン・タ・が!」
「あら? でしたら、貴女も〝変人〟という事になりますわよね?」
「フ……フフフフフ……」
「ウフフフフフフ ♪ 」
リンちゃんとラムスちゃんが静かなる火花を散らす中、低木を掻き分けて問題の相手が現れた。
「ようやく追いついたぞ! リンにモモカよ!」
……ハッちゃんやった。
「我を置いて行こうとしても無駄な事! そう、このハーチぁぐっ!」
噛んだ!
遂に、そこまで噛んだ!
どんどん堕ちていく!
こっちの〈女王様〉!
「カオスは、もういい」
クルちゃんの醒めた本音には、ウチとリンちゃんも同感やった。
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![凰太郎](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/36129993/profile_a81dd58cfc2fea4e945089ffb0712e12.jpg?width=600&crop=1:1,smart)