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G-MoMo~銀暦少女モモ~:クルちゃんと惑星ジェルダ Fractal.7
「イ~ヤ~や~~!」
たぶん、おそらく、ほぼ確定的に、間違いなく〝陽ノ咲モモカ〟だ。
私の知人であり、尚且つ、現状況下で〝銀暦イァスナク弁〟を喋る少女は彼女しかいない。
あ、森から矢のように飛び出した。
ヘリウムブースター全開で。
すぐさま超高速で飛来するイザーナ。
「Gフォルム・メタモルアップ! Gモモ!」
動画の倍速再生宜しく、僅か数秒で巨大化変身を完了。おそらく通常時の二倍速。
それだけ焦っていたという事だろう。
疑問は、いくつかある。
何故、そんなに焦っていたのだろう?
何に対して、そんなに怯えていたのだろう?
どうやってニョロロトテテップの拉致状況下から脱出したのだろう?
そんな考察点を諸々浮かべていた直後、彼女を追って真犯人が姿を現した。
「うふふ♡ 逃しませんわ ♪ モモカ様♡ 」
森から跳躍に飛び上がったのは、よく見知ったメイドベガ。
視認と同時に疑問が一気に氷解した。
おそらくラムスが救出へ向かった──
その後、悪い性癖が発動──
陽ノ咲モモカは生理的嫌悪感のままに逃走するも、執拗に追われて、現状に至る────
大方、そんなところだろう。
「では、失礼致します」
「ぎゃん?」
ラムスが腕を引くと、連動したかのようにGモモが墜落した。
「ふぐぅ……う……動けへん?」
大の字で地面へと拘束されるGモモ。
「さて、それでは……いまこそ愛の抱擁をーー ♪ モモカ様ーー♡ 」
「イーヤーやーーーーッ!」
両手広げの偏愛に飛び込むメイド。
恐々と拒否を叫ぶ巨大少女。
ふむ?
なるほど、そういう事か。
ラムスは〈ブロブベガ〉であり、そもそも部位境界の概念は適用されない。
如何なる形状であろうとも、本体と繋がっている限りは彼女の一部だ。そして、その性質や強度も変質自在。
おそらくGモモには紐形状で部位を結び付け、それを手繰り寄せた。
ついでに言えば、先程の〝らしからぬ超跳躍力〟も、陽ノ咲モモカへと結び付いて引っ張られていただけの事だろう。
そして、地面には自らの液状部位を撒いておき、トリモチの如くGモモを捕獲した。
彼女の粘着力と張力は極めて高い。
かつては飛翔せんとする巨大ロボットを地面に縫い付けた実績もある。
それはともかく……とりあえず尻尾部の電磁鞭〈テールビュート〉で叩き払っておいた。陽ノ咲モモカへの義理立てで。
「あうッ?」
落下した。土煙を上げて。
「ラムス、訊いておきたい事がある」
パモカを用いて、彼女へ直接連絡。
心配無用。
彼女も〈パモカ〉を所有している。
『痛たたたた……何ですの! 他人を叩き落としておいて平然と!』
「アナタは何をやっている?」
『あら? 貴女にしては愚問ですわね? 御覧の通り、モモカ様を救出しましたのよ?』
「その後」
『決まっているじゃありませんか? そ・の・後・は……ウフフ ♪ 』
何が「決まっている」かは知らないし「ウフフ」と言われても意味不明。
回答にはなっていない。
「助けてぇ! リンちゃん! クルちゃん!」
詳細は解らないが、面倒事が増えたのは直感した。
ふむ? どうしよう?
「アタシのモモに何してんだーーッ! この変態メイドーーッ!」
GリンがUターンに突っ込んで来た。
『パブロフの犬』宜しく〈ネクラナミコン〉そっちのけで。
そのままGモモの前へと隔たり立つ。
「あら? そんなに出番が欲しいんですの? モブ女?」
「うっさい! このビチビチビッチメイド! アタシのモモに何かしたら、タダじゃおかないわよ!」
一触即発に対峙する似た者性癖。
ふむ? やはりカオス化した。
こうなると〈ネクラナミコン〉争奪戦は、ドクロイガーに賭けるしかない。
少なくともニョロロトテップへ渡すよりはマシだ。
改めて戦況へ振り返って見ると……あ、無様にやられてフッ飛んだ。
使えない。
「ようやく手に入れたぞ……我が〈ネクラナミコン〉を」
確保した石板へと至悦に見入る。
「天条リン、陽ノ咲モモカ、困った事になった。ドクロイガー所有の〈ネクラナミコン〉が、ニョロロトテップに奪取された」
「ふぇ? 〈ネクラナミコン〉奪われたん? 大変や!」
事態の重大さを理解……してはいないかもしれないが、とりあえずGモモは狼狽の色を浮かべた。
一方、Gリンは……。
「くれてやれ! ンなモン!」
ラムスを睨め付けたまま吐き捨てた。
完全に頭へ血が昇っている。
「アカン! リンちゃん! アレ、クルちゃんの大切な物やん! 一生懸命集めてる物やん!」
「石板の一個や二個知るか! 後で纏めて奪い返してやるわよ! アタシはアンタの方が百倍大事だッつーの!」
天条リンの言い分は分かる。
どちらを比重に置くか……天秤は陽ノ咲モモカだ。
……何故?
確かに天条リンにとっては〝陽ノ咲モモカ〟だろう。
それは承知している。
けれど、私にとっての最優先事項は〈ネクラナミコン〉だったはずだ。
なのに何故、私は同調の理解を抱くのだろう?
ふむ?
「アカン!」
「アカンくない!」
「アカン! ウチ、クルちゃん困らせたない! クルちゃん泣くのイヤや!」
……別に泣かない。
が、どうやら陽ノ咲モモカの頑固が発動したようだ。
こうなった時の彼女は、周りを屈するまで軟化しない。
「ふぎぎぎ……っ!」
懸命に〝ラムスホイホイ〟を引き剥がそうと試みる。
たぶん無理。
ラムスが、ほどかない限りは。
というか、ラムス?
何故、ほどかない?
私が知る限り、アナタは聡明な人種に分類される。
というか、抜け目が無い。
というか、したたかだ。
場合によっては狡猾にも映る。
ただの辛辣キャラではなかったはず。
状況を把握できない程、愚かでもない。
ふむ?
そんな疑問を巡らせる最中、不意に彼女は人差し指をフルフルと立てた。
「その〈ネクラナミコン〉というのは、コレの事ですの?」
クンッと指を引くと、強引に石板が引き寄せられる。
「何ッ?」
ニョロロトテップが動揺の色を染めるも、時既に遅し。
獲物は容易くラムスの手へと収まった。
「たぶんコレの事だと察して、先程〝糸〟を付着させて頂きましたわ。私の〝糸〟は私自身……自在にコントロールできますの」
上空の敵へ向けて温顔ニッコリと挑発を投げ掛けた。
静かな敵意が反目する。
「惑星ジェルダの女王……キサマ、よくも!」
「あら? 貴女に〝キサマ〟呼ばわりされる筋合いはありませんけれど?」
「……何故だ?」
「はい?」
「キサマは〈ネクラナミコン〉の争奪戦には無関心……部外者であったはずだ」
「ですわね。正直、こんな石板どうでもいいですわ。役に立ちそうにもありませんし……コレでしたら漬物石の方が、まだ価値がありますわね」
「ならば、何故だ!」
「友達がコレクションしていますので ♪ 」
……ふむ?
「覚悟は出来ているのであろうな? クイーン・ジェルダ!」
「あら、それはコチラの台詞ですわよ? 無粋な暴君様?」
「何?」
「貴女が〈アリログ〉達に強いた理不尽な狼藉……私が知らないとでも?」
「ラムスちゃん、ロッポちゃん達の事を知ってたん?」
「ああん、モモカ様♡ もう一度〝ラムスちゃん〟と呼んで下さいまし ♪ 」
「……イヤや」
「シクシク……そんな御無体な」
「っていうか、ほどいて~!」
「それは却下致します ♪ 」
「何でッ?」
「モモカ様を危険な前線へ立たせたくはありませんから★」
「ふぇ? ウチの為……なん?」
「そ・れ・に ♪ ジタバタと苦悶にもがくモモカ様の肢体を見ていたら、何だか興奮してまいりましたの……うふふふふ♡ 」
「やっぱほどいてッ!」
ラムス、アナタは恍惚に何を口走っている?
「ってか! だったら、何でほったらかしにしてたんだッつーの!」
「何かを探しているのは解っていましたから、それを手にしたタイミングで御破算へと貶める事が、何よりも御仕置きになると思いまして ♪ 」
さすがにラムスだ。
その辺りのしたたかさは健在。
「キサマ達如きが、この私に勝てると思うか!」
「さて? 勝率は判りませんけれど、勝てるんじゃありませんこと?」
「何?」
「えっと……何でしたかしら? そうそう、確か──やってみなけりゃ分からない! やるだけやったら、どうにかなる! ──でしたかしら?」
「何だ? それは?」
「「バカの格言」」
私とラムスの断言が意図せず重なった。
「どうやら戦力差を分かっていないようだな。私がその気になれば、こんな惑星など壊滅できるのだぞ!」
「でしたら、その惑星そのものを相手取って頂きましょうか?」
不敵な余裕を飾り、彼女は指笛を高らかに吹いた。
振動──。
惑星自体が震えているかのような微震──。
その力強さは次第に増大していき、宛ら大地震のように大気すら震わせた。
発生源は四方八方からの土煙。
それは大地の怒濤の如く、我々の──いや、ラムスの下へと押し寄せて来る!
生命であった。
この惑星ジェルダに棲まう生命達であった。
六本腕のゴリラ〈アリログ〉──。
三頭のサイ〈タングロス〉──。
蝙蝠の巨翼で羽ばたく大蜥蜴は〈ラプロドン〉──。
電光を纏うカラフルな蝶は〈デンコチョウ〉──。
そして、山の如き巨体に吠える直立型恐竜は、原始生命体の頂点〈ディメラ〉────。
ありとあらゆる原生生物が、ラムスの指揮下へと集合した!
まるで〈惑星ジェルダの意思〉を、総意に代弁するかのように!
「さて、では御相手して頂けます? 我々〈生命〉を?」
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![凰太郎](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/36129993/profile_a81dd58cfc2fea4e945089ffb0712e12.jpg?width=600&crop=1:1,smart)