松下幸之助と『経営の技法』#40
3/26の金言
自らの行動を反省する。それは人間の1つの義務である。
3/26の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
人間は自省しなければならない。戦前は、この心がまえを、ことにやかましく言われていたが、戦後はこの傾向が薄れている。自省ということを尊しとしない風潮が広がっていて、いろいろな混乱がひき起こされている。真の自省は、主義とか思想以前の、人間としての一番大事で基本的な心構えの1つであり、この基本に立ってこそ、はじめて「われ何をすべきか」がわかってくる。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
松本幸之助氏の言葉から、すぐに思い浮かぶのは、リスク管理の観点から見た場合にはPDCAサイクルであり、営業の観点から見た場合には「カイゼン活動」「QC活動」でしょう。
すなわち、経営者一人が自省に励んでも、経営者の思いを形にする会社組織が「自省」しなければ意味がありません。経営者に対する教訓は、会社組織の在り方の提言なのです。
つまり、一人一人の意識だけで終わらせるのではなく、それを組織的な活動にまで高めることが経営として求められるのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
もちろん、経営者自身にこのような意識が無ければ、組織だけそのような組織に育つはずがありませんので、経営者を選ぶ際、さらに、経営者に働きかける際の、一つのポイントとして「自省」が効いているかどうかを考慮すべきでしょう。
とはいっても、行き過ぎた「自省」は、リスクを取ってチャレンジすることを阻害する危険を伴います。
「自省」はそれ自体が目的ではなく、チャレンジするための手段として位置付けるべきでしょう。
3.おわりに
自省を形にするような、「カイゼン活動」「QC活動」「PDCA」等が指摘されることは、松下幸之助氏の指摘する、戦前の日本社会の良い所を取り戻す動き、と積極的に評価することも可能でしょう。
しかし、これには当然、逆の見方も可能です。
すなわち、個人や社会に、「自省」が浸透していないからこそ、意識的にそれを形にしなければならない状況になっていること、すなわち、社会や個人が劣化していること、の証拠と見ることも可能です。しかし、仮に劣化であるとしても、それを嘆いているだけでは話が始まりません。劣化した個人や社会を相手に、それでも会社の競争力を高めるために常に自己改革ができる会社組織を作る必要があり、そのように設計する際の1つのポイントとして、「自省」が重要になるのです。
どう思いますか?
※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
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