松下幸之助と『経営の技法』#94
5/19の金言
サービス精神に事欠いてはならない。すべてがサービスから始まる。
5/19の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
子供の時分によく親方から教えられたのは、商売人というものは、“損して得取れ”ということです。これは、損を惜しんでは商売人として成功しない、ということです。これは、商売だけではなくて、個人、人間の社会生活に通ずることです。今日の言葉でいうならば、まずサービスからかかれ、サービスをして初めて成果が認められるんだということです。昔はサービスという言葉はございませんでしたから。
そのサービスを適切にやって、満足されることによって、松下を非常に支持してくださることに結びつき、繁栄に結びつきます。
松下電器のすべての人は、サービス精神に事欠いてはならない。それは、友人に対するサービスであるし、会社に対するサービスであるし、顧客に対するサービスであるし、社会に対するサービスである。一切がサービスから始まる。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
「損」の意味ですが、ここでの言葉が従業員に向けた言葉であること、その「損(=サービス)」が、友人、会社、顧客、社会に対するものであること、などを見れば、いわゆる「先行投資」に該当する「サービス」をイメージしているようです。
さらに、松下幸之助氏の時代にはなかったのではないかと思われる用語として、「リスク」もここに含めたいと考えます。
これは、ビジネス=儲ける=リスクを取ることが必然、という古今東西、万国共通な自然の摂理を表したもので、経営としては上手にリスクを取ることが求められている、リスクを避けている経営者は経営者失格である、というものです。
したがって会社としても、リスクを避けるだけでなく、組織として腹を括ってリスクを取れる体制にしなければなりません。その具体的な方法は全く触れられていませんので、チャレンジできる組織を作るためにやることは、それぞれの会社の実情に応じて個別に検討しましょう。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係で見た場合、先行投資(=サービス)にしろ、リスクを取る(=チャレンジ)にしろ、何もせずに儲けられると思っているような、気楽で無責任な人は経営者の素養に欠ける、ということが理解されます。
しかも、経営者ですので、一人でそれを理解しているだけでなく、組織にそれを実行させる指導力やリーダーシップが必要です。
投資やリスクを取ることについて、どのような意識を持っているのか、を確認することが、経営者選びの出発点になるでしょう。
3.おわりに
さらに重要なポイントは、つべこべ言わずにまずはサービス(=先行投資、チャレンジ)しろ、という点でしょう。顧客の信頼を作るための努力をする前に悩むよりも、顧客の信頼作りをまずは開始し、そのことで学んだことも含めて、戦略を考えるべきである、という、いわゆる「走りながら考える」に近い考え方も、この背景にあるように思います。スピードが重要な現在、慎重な検討よりも「走りながら考える」ことの優位性が見えてきたように思われます。
どう思いますか?
※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
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