松下幸之助と『経営の技法』#39
3/25の金言
1000個売れれば10万個も不可能ではない。後は腕次第、やり方次第、熱意次第である。
3/25の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。短いので、全文を引用しましょう。
商売においては、商品がたとえ5個でも売れれば、売り方によっては、さらに1000個は売れると見てよい。1000個売れれば10万個も決して不可能ではない。全く売れないのなら別であるが、5人でも買う人がいるということは、その商品が人々に受け入れられるということを示していると思う。人の考えることにそう大差はないからである。
あとは腕次第、やり方次第、熱意次第、そう考えればそれだけ商売が面白くなり、励みも出るのではないか。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
ここで特に注目されるのは、原因分析の在り方や、PDCAの回し方です。すなわち、商品が売れない原因を考えたとき、ここでの松下幸之助氏の発言は一見すると、古風な「根性営業」を述べているようにも見えます。
けれども、氏は一言、その理由を述べています。「人の考えることにそう大差はない」ことが理由なのです。
このことから、単なる「根性営業」の勧めでないことがわかりますが、さらにここから、いくつかの教訓が導かれます。
1つ目は、諦める理由を探すのではなく、せっかく開発した商品であり、継続する理由を探そう、という姿勢です。思ったより売れていない、という過去の実績を根拠にするのは簡単ですが、それを覆す将来の見通しを合理的に立てることは、商売する立場として決して容易ではありません。けれどもそれをやるからこそ、商品開発への努力が報われるのです。
2つ目は、骨太なロジックの重要性です。市場の動向、商品の特性、ターゲットとなる顧客層の分析、など細分化し、緻密な分析を行うことは技術的に可能ですし、実際にそのような分析も重要です。単なるあてずっぽうで判断すべきことではないでしょう。けれども、そのような精密な分析を行っても、基本となる骨太な視点を見失うと、判断を誤ります。
このように見ると、氏は、骨太な考え方を示していることが理解できます。すなわち、少しでも商品が売れた以上は、需要があることになる。それでも販売を止める場合には、相当の合理性が必要となる、という判断の枠組みが示されているのです。
3つ目は、従業員のモチベーションです。氏のコメントは経営者の意識のような説明になっていますが、経営者の思いを形にするのが内部統制です。諦めるのではなく、もっと工夫しよう、必ず売れるはず、というモチベーションを従業員に与え続けることも、経営者として重要な役割のはずです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家と経営者の関係から見た場合、特に注目すべき経営者の資質として、①決して全体を見失わない、大局的な視点や合理的に判断できることと、②決めたことをやり通す粘り強さが、指摘できるように思われます。経営者を選ぶ際、あるいは、経営者をチェックし、働きかける際のポイントとして、参考にしましょう。
3.おわりに
松下幸之助氏は経営の神様と言われており、合理性のない単なる根性営業ではない、という前提から分析してみました。
どう思いますか?