松下幸之助と『経営の技法』#50
4/5の金言
困難に直面するたびに自問自答する。心を入れ替えて、懸命に立ち向かう。
4/5の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
国民や国家が、それぞれの分野に、それぞれの仕事に命を懸けて取り組み、そこから自らの喜びを味わっているというような勤務体制、仕事体制をより多くもっている国が一番発展していき、お互いの幸せに結びつく。
自分も、困難な問題に出くわすたびに、自分はこの仕事に命を懸けてやっているかどうかを自問自答してきた。そして、命を懸けていないときに煩悶が起こることに気付いた。
つまり、「自分は困難に直面して、命を懸けて仕事をしていなかった。楽をしていこうと考えていた。そこにこの煩悶があるのだ」と感じた。そこで、心を入れ替えてその困難に向かっていくと、勇気が湧き、困難も困難とならず、新しい創意工夫も次々と起こってきた。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
ここでは、困難を克服する努力の重要性が強調されています。すなわち、困難であるほど、克服した場合にメリットが大きいことになる、と言えるでしょう。
これは、経営者個人の問題として見れば、経営者の心構えの問題になりますが、会社組織の問題として見れば、困難な問題を克服するために人的な資源や資金を投入すること、それも会社組織の「命を懸ける」ほどに、例えば採算を度外視し、社運をかけて取り組むこと、を意味するでしょう。
しかも、命を懸けて仕事に取り組むことで「自らの喜びを味わっている」ことが必要です。
これは、会社の人事体制や運営の問題になりますが、例えば人事考課に際しても、失敗した結果によって減点される減点主義制度よりも、困難な問題にチャレンジすることが適切に評価される加点主義制度を志向するなど、困難な問題に取り組むことに喜びを感じられる制度や文化作りが必要なのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係で見た場合、問題から逃げようとするのではなく、社運を賭けた取り組みに、経営者自身として挑戦し、責任を取れる人物であること、がポイントになります。しかも、それだけでなく、会社全体が、チャレンジすることに意欲的に取り組み、喜びを感じられるような仕組みづくりや社風づくりができることが重要です。経営者一人が空回りしていても、会社組織として成果を上げることができないからです。
3.おわりに
戦争を生き抜いた世代の発言であり、表現に時代を感じます。また、国家主義、全体主義的なイメージを持たれるかもしれません。個人の意思や努力が全てであるような表現となっていますが、仕事に喜びを感じることがキーワードでしょう。命を懸ける対象であったとしても、仕事は修行や苦役ではない、という意識がその根底にあるのです。
どう思いますか?
※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
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