松下幸之助と『経営の技法』#12

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.2/27の金言
自分をよくみつめ直し、私心なく理解する。その上で“われ何をなすべきか”を考える。

2.2/27の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 自分で自分をよくみつめることを、「自己観照」と呼ぶ。自分の心を一ぺん自分の身体から取り出して、外からもう一度自分というものを見直す。これにより、自分の力、可能性、適性、欠点などが自然に見えてくる。その上に立って、“われ何をなすべきか”を考えるので、過ちが少なくなる。戦国武将の時代も、自己観照できるかどうかが、浮沈に繋つながっていることが多い。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 自己観照の、組織論的な分析は、前日(2/26)に行いましたので、ここでは、社長自身のリーダーシップの問題として、分析しましょう。
 ここで、松下幸之助氏は、「心」を観察する、としています。これにより、自分の力、可能性、適性、欠点などが自然に見えてくる、というのですが、力や可能性などを直接観察するのではなく、それによって自分の心がどのように揺らぐのか、を観察することを意味するのでしょう。心の揺らぎから、そこに影響を与える自分自身の輪郭を把握していく方法です。潜水艦のソナーのような印象を受けます。リスク管理の観点から言えば、リスクセンサー機能に該当します。
 続けて氏は、その上に立って、何をなすかを考える、とします。そうすると過ちが少なくなる、というのですから、自分の適性に合った作戦や行動を取る、という意味でしょう。リスク管理の観点から言えば、リスクコントロール機能に該当します。
 このように、自分自身を観察し、使いこなすことが、経営者の資質として必要な資質なのです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 さらに、ガバナンス上のコントロールとして、株主による「適切な」コントロールも期待されるべきです。
 これは、経営者が上記のような資質を有する人選の問題がメインとなります。特に、役員の選解任は、古来投資家が保有する権限の2つ、「金」「人」のツールのうちの後者に該当しますので、投資家には人を見る目も必要となるのです。

5.おわりに
 経営者の資質に関する松下幸之助氏の言葉は、いずれも非常に厳しいものです。
 それだけ、氏自身が、自分自身を規律していたことの表れと思います。自分に厳しい、ということも、経営者にとって必要な資質のように思いました。
 どう思いますか?


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