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何で学校でICTを使うのか?

GIGAスクール構想

 GIGAスクール構想ってご存知ですか?
 「ギガ」って携帯の通信の容量のこと?と思った方もいるかもしれません。実は、恥ずかしながら私もそうでした(笑)GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allという言葉の略で、2019年に文科省が打ち出した教育施策です。文科省のHPを見ると下記の様な内容が書かれています。

1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育 環境を実現する

これまでの我が国の教育実践と最先端の のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す
GIGA スクール構想の実現へ 文部科学省

 いわゆる一人一台の情報端末機器が配備されインターネットを学校中で使えるようにするということですね!私の勤務している自治体でも昨年12月から小中高で端末整備が行われ、勤務校では一人一台生徒にiPadが配られています。授業に生徒が教科書やノートだけでなくiPadを持ってくるようになり日常の風景が大きく変わりました。

でも、生徒たちが勝手に写真撮ったり、授業中に関係ないページを見てサボったりするんじゃないの?

 これは教員なら誰しも頭をよぎったことではないでしょうか?正直、情報端末機器の使わせ方でこれが正しいというのは難しいでしょう。ガチガチにルールを作って縛りつけてしまっては、せっかくの端末がその価値を発揮できないですし、とは言え何でもありになってしまうとさまざまなトラブルに発展しそうです。学校の生徒の状況や雰囲気、または、目指したい生徒像になど学校によってもさまざまな状況があるので、今の段階としては各校とも最適なルールを模索している段階ではないでしょうか?


そもそもなんでGIGAスクール構想なの?

 ICT活用という言葉はここ数年間現場で言われ続けていましたが、インターネット環境や端末の問題で実践できていない学校がほとんどでした。特に一昔前までは「携帯、スマホの学校持ち込みは禁止!!」という学校が多かったので授業中にインターネットに触れたければ数少ないパソコン教室に行って使うしかなかったというのが現状でした。このように日本の学校においてICT環境が活用される場面は少なく、国立教育政策研究所のOECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~では「1 週間のうち、教室の授業でデジタル機器を 使う時間の国際比較(2018 年)」で多くの教科において日本はOECDの中でも最下位と言う結果が出ています。ちなみに私の担当する美術も最下位だったようです。

国立教育政策研究所 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~

 まぁ正直使いたくても使えなかったと言った方が正しいかもしれません。だって環境がなかったんだから!この結果は当然と言えば当然です。

ってことは日本の生徒は他国の生徒に比べて情報端末機器を使ってないの?

 と思いたくなるかもしれませんが、そんなことありませんよね。今や高校生でスマホを持っていない生徒を探す方が難しい状況になっているのはないでしょうか?
 では、高校生たちは情報端末機器をどのように使っているのでしょう?ここで面白いのは下記のデータです。

国立教育政策研究所 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~

!!!ゲームで遊ぶは1位!!!
 この調査の資料を見てみると学習に関するICTの活用では日本は多くの項目で最下位にもかかわらず、ゲームだけは1位なんです。・・・なんか複雑ですよね。このデータからは高校生はゲームするのにスマホなどの端末を使っているものの勉強ではほとんど使っていないというのが見えてきます。まぁ「わかっていたよ」って感じですが、、、、

 でも、ここで言いたいのは日本の教育が世界的に劣っているのかと言うとそうではないということです。OECDの中でも「数学的リテラシー」は1位「科学的リテラシー」は2位と世界トップレベルを維持しています。「ICT使っていない=勉強ができていない」ではないですよね!

 では、なぜ、GIGAスクール構想なのか?それにはSociety5.0時代と呼ばれる社会構造の変化が要因にあると言われています。Society5.0とは超スマート社会と呼ばれ社会の中でAI技術が進歩し、社会のあちこちで活用されるようになり、雇用の在り方も変わっていく新しい時代のことです。もうすでにこの時代は到来しつつあります。例を挙げるとスーパーのレジなどが良い例ではないでしょうか。今、スーパーではセルフレジが増えていますよね!ちょっと前までは店員さんが商品をスキャンしお金を払ってましたが今は自動化されています。今後、さまざまな場面でこうした変化は加速度的に進むと言われています。

 と言うことはレジ打ちをしていた人の仕事はだんだん少なくなってしまうということになりますよね。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士によると米国において10~20年内に労働人口の47%が機械に代替可能であると試算をしています。こうした社会の変化においてAIやICTを活用していく事は切っても切り離せないと言えると思います。教育とは今だけを見つめて行うものではなく生徒たちが大人になった10年後20年後を見据える必要があります。そうした中でICTを活用することは社会を生きていくうえで必要なスキルと言えるのではないでしょうか?
 GIGAスクール構想の背景にはこうした社会の変化が大きく影響しています。

多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された学び

 先ほどの文科省からの引用の中にこの言葉が出てきます。ICTを使うことが個別最適化された学びにつながるの?といささか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。もちろんただ、インターネット使って授業しようではこうした学びの実現はできないでしょうが、使い方を工夫するとこうした学習に繋げることができます。例えば、ICT化される一つのメリットとして動画の視聴ができると言った点があります。言葉や文字による説明されるよりも映像化されたものであれば理解できるということってありませんか?人によって特性はあると思いますが、私はこの傾向が強く、言葉や文字よりも画像、映像化されたものの方が理解できます。今までも先生方はスライドを作ったり板書の工夫をされたりしていたと思いますが、そこに新たに動画を活用すると言った選択肢が増えたことで授業の幅が広がり、私の様なタイプの人間でも理解できる授業が展開できると考えられます。

 また、私の授業の例を言うと、絵画を制作する際には、私の説明だけではなくYouTubeで動画を閲覧しても良いようにしています。私自身もYouTubeをよく見るのですが、絵画はたくさんのYouTuberが描き方の解説をあげています。生徒には自分の描きたいものに合わせて自分で動画を探し、見ながら参考にしても良いと伝えており、こちらから「この動画がおもしろいよ」と伝えて閲覧させることもあります。もちろんこの使い方が他の授業でも通用するかと言ったら難しいものがあるかもしれませんが、美術の実践の一例として捉えて頂けたらと思います。こうした動画を活用することで生徒は私以外のさまざまな描き方に触れることができ、自分の作品にあった描き方を探すことができます。ある生徒は私の勧めたYouTube動画にハマってのめり込むように見て描いており、授業アンケートには「〇〇さんの動画を紹介して頂いてありがとうございました」と書かれていました。ちょっと複雑な気持ちもしましたが、私もYouTuberに負けない授業ができるように頑張らなければいけないですね(笑)

 このようにICTが導入されたことにより今まで使えなかったツールを活用することができ、それにより、生徒が自分に合った学びを選択できるようになります。うまく活用すれば今まで学習に苦労し、取り残されていた生徒を救う事にもつながるでしょう。


まとめ

 GIGAスクール構想により、これからの教育では今まで以上にICTを活用していかなくてはならないでしょう。導入の流れは止められないし、生徒にどのように使わせていくかを工夫することも大切です。ICT活用をただのインターネットを使わせるに留めずに学習過程の中に効果的に活用していければその可能性は無限に広がります。noteを見ていても、さまざまなICT活用の実践例が載っていますので、まずは、いろいろな実践を参考にしていくことが大切ではないでしょうか。

無理せず、気負わず、まずは、できるところからICTを活用してみてはどうでしょう。


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