夜を食べる【詩】
食べる、夜空を
食べる、夜風を
食べる、夜の気配を
「もう僕に昼は来ない」
視力を失ったあなたはそう言い放った
だからわたしは「夜」になろうと決めた
夜の要素を食べ尽くし
夜しか生きられないあなたのために
昼よりもずっと優しい夜になる
もう誰かの期待に応えなくてもいい
自分と人とを比べなくてもいい
一人で苦しまなくてもいい
わたしがあなたの夜となって
あなたを受け止めるから
昼は来ないかもしれないけれど
これまで過ごした昼の蓄積は
あなたの内側で融合され
恒星のような光を放っている
夜はあなたの存在を必要としている
わたしは
食べる、夜空を
食べる、夜風を
食べる、夜の気配を
夜を食べ続けているわたしは
宇宙のように膨張しはじめたのだから
あなたは自由に動き回り
ここで生きていっていいのよ
「あなたには夜がある」
だから安心して
ここで生きていっていいのよ
©️2023 ume15
お読みくださりありがとうございます。
#シロクマ文芸部 先週に引き続き二度目の参加です。よろしくお願いします。
初めての参加作品『なくしたもの』(掌編小説)は、たくさんの方に読んでいただくことができました。ありがとうございました。
あらら、まだでしたか?
残念……。
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