会えますように!
わたしの幼いころのはなし。
もう40年ほど前のこと。
祖母に手を引かれて、その神さまに初めてお会いした。神さまは、道と川の境にある、しめ縄が張ってある石碑あたりにいらっしゃるようだ。
祖母は目を閉じ、こうべを垂れ、手を合わせて祈っている。わたしも、見よう見まねで、手を合わせる。片目で、祖母をちらちら見ながら。
「神さまがおらっせるのよ。この神さまは、どなたかを、ここで待ってりゃーすのよ。」
どうやら、この場所でなくてはならないらしい。この神さまに、ここにいていただくために、道を作るときも、ここだけはこのままの姿で残したそうだ。
祖母は、近くの神社に来るたび、ここにも寄って、祈っていた。
「この神さまが、会いたい方に、いつか無事に会えますように」と。
わたしはいろいろ、考えた。
どんな神さまが、どうして、それから誰を待っているんだろう。会いに行った方がはやいんじゃないかなぁ。無事に会えたかどうかは、どうやったらわかるの。石が割れたりするのかなぁ。
祖母に聞いたが、祖母がわかるのは、神さまがどなたかをずっとこの場所で待っていること、だけだった。
「ずっと待っているのは大変じゃないの」と祖母に言うと、祖母はふふふと笑って、
「人間の一生は、神さまからしたら、まばたきするくらいの時間だがね。だから、そんなに長い間じゃないはずだわぁ。」
「そうかぁ。そんなら、よかった。」
わたしはもう一度、今度はきちんと手を合わせた。
会えますように!