息子の入試物語2 『そんなこんなで』
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息子の入試の日。
車で、最寄駅に向かう。
10メートルほど走ったら、急に思い出した。100円玉がなかったかもって。息子にお財布を確認してもらったら、やっぱりなかった。
最寄駅のパーキングは、1日300円。100円玉しか使えない。以前、100円玉が足りず、ジュースの自販機まで、息子に走ってもらったことがある。今日は、走らせたくない。慌てて、うちへ戻る。
100円玉を補充して、気を取り直して、再出発。
運転に集中する。
5分ほど走ったら、息子が言った。
「かあさん、どこに向かってる?」
「ん?あれ、ここはどこ…」
あっ、気づいたら、向かうはずの駅とは正反対の道を走っている。なぜ…
心臓が跳ね上がる。気が張り詰めていて、うっかりするパターンだ。
あぁ、やっちゃった…いつもの駅まで戻ったら、予定の電車に間に合わないかも。落ち着いて、落ち着いて。そうだ!別の駅に向かおう。
息子にそう告げ、車のスピードを上げる。
信号で止まったとき、恐る恐る、息子を見た。
にやにやと、笑っている…
わたしと目が合った息子は、ついに爆笑。
「もう、かあさん!なにも入試の日に、うっかりしないでよ!」
「はい。本当にその通りでございます。大変、申し訳ありません…」
そんなこんなで、いつもは使わない駅に着き、慌てて、改札へ向かう。
ふぅ、予定の電車に間に合った!
予定外の事で、息子が調子を崩すと思いきや…まだ、笑っている。緊張感なし。かえって、よかったのかな。
それからは順調で、高校前まで、無事に到着。
握手して、送り出す。
息子は、何度も何度も、こちらを振り返りながら、高校へ入る間際に、大きく手を振った。
がんばれ!息子。心の中でエールを送る。
ちょうど、夫からも応援メッセージが届いた。
おんなじ気持ちだね。
続きます…