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540○ 母

つい先日、いとこが亡くなった。
去年の暮れに亡くなった祖母の四十九日で春頃に会ったのが最後になった。
小学生の時に親戚集まってみんなで海に一度だけ行った時に、既に高校生だった彼は、日本で上から数えて上位に入る大学を目指し勉強中であり、尚且つ周りの期待も非常に大きかったと後に知った。

しかし、現役不合格。更に一浪失敗。

二浪は免れたが目標のところには手が届かなかった。

その辺りから、毎年夏休みに遊びに行っていたいとこの家に行くと彼のお母さんがいないことに気づいた。
僕も高校生になったくらいで、毎年夏休みの行事のように行っていた訪問もしなくなり、中々会う機会も減ってしまっていた。

月日は流れ、祖父が亡くなった時、久々に家を訪れた。

お兄さんは無口になり、話を交わすこともなく、ただそこにいるという感じ。近況も分からぬまま、葬儀か終わった後も挨拶もろくに出来ない。そんな状況か続いていた矢先-ー


彼の本心は分からないままである。

ただ、離れて暮らす妹が偶然というのか、数日前夢を見たと。

業界の垣根を越えた付き合いをしていた彼の父親がまだ若い頃、隣に居たのは美しい着物を着て、口紅をしっかり乗せた若い女性。その絶世の美女こそ、彼の母親その人だ。
まだ少年であろう彼は彼女の子供ながら、彼女に見とれずっと見つめていたそう。満足した顔で。

妹は彼が母親をずっと想いながら、ただ純粋にお母さんを待っていたのだと。
帰っては来ない母親、今どこで何をしているか分からない母親をずっと想い続けていたと、涙を流しながら、この想いを電話でもいいから彼女に伝えてほしいと言っていたそう。通夜の前日の話である。

僕はこの物語や想いを文章に、詩にしようと思った。

また思い出すために。

彼も彼女もこの奇跡のような話も。





「母」

男は家族のために働くと
家族を顧みずに兎に角前へ前へ
開かれていく人の波、波
集まっては離れていく光と影の日々
その内に営みは
母と僕が舵を取り合って
まるで相棒のように進んでいた
五山の送り火の最中
見上げた夜空は満天の星たちに埋め尽くされ
その時ばかりはなぜが
誰にも話せない想いを一つずつ
星にぶら下げたんだ
積み上げてきたものが否定されたと同時に
母は私の元を離れた
大人の事情に私など入る隙もなく
更なる想いを胸に刻み
あれから何十年経ったのか
私は先に力尽きてしまいました
体は大人になったけれど
心はあの時のままずっと
少し上から見下ろせば
なんて清々しい景色が広がっていたのかと
そんなことすら忘れていた
思いもよらぬ一報に
涙したと聞きました
それだけで私は凄く楽であります
忘れたくても忘れられないことが
この空にはいつも渋滞していて
気が遠くなる程遠くにいても
あなたを想っていると
伝えておきます
またこちらで会えるのが楽しみです
いつかまた
またいつか


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NAKAJI

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