読書の記録 12月
読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。
①六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成
あらすじ:成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。(引用元:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210000678/)
②アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎
あらすじ:妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。(引用元:https://hyakuhon.com/novel/%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E3%82%92%E3%81%B0%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%82%8A%E8%A7%A3%E8%AA%AC%EF%BC%81%E3%80%8E%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8D%E3%83%8A/#google_vignette)
感想
「六人の嘘つきな大学生」は読んでいて立ち止まる部分がなかった。引っ掛かりのない、明晰な文章。筆者が読者に理解してもらいたいように緻密に書いているような印象。文章として楽しくはなかったけど、登場人物6人のキャラクターがしっかり、着実に描かれていく点はお見事。仕草や表情がありありと浮かぶし、それぞれの登場人物に愛着を感じてしまう。
それに比べて後者「アイネクライネナハトムジーク」は、キャラクターがよく描かれていない点が残念。短編集であるこの作品は、まるで芸人が一部の芸人を揶揄する時の常套句「単独ライブでタイトルや伏線を回収していく感じ」を小説でやっていた。単独のコントはカタルシスがあって好きなものもあるが、この短編集のいまひとつなところはキャラクターが描き込まれていないこと。前のお話に出てきた人が後の話に出てきた時に、「これは誰だったけ…どんな人やったっけ…まあええわ…」ってなってしまうのは僕の読書の姿勢にも問題があるとも思うけど…。小説って基本的には終盤に行くにつれて、例えば「ハジメ」というキャラクターが出てくる場合には「ハジメ」というカタカナ三文字に色んな背景や感情が付与されていていって、もうただのカタカナ三文字には見えなくなっていくやんか…?それが、この「アイネクライネナハトムジーク」ではずーっとカタカナ三文字の「ハジメ」で、ハジメに深みが出てこない感じはした。(※ハジメは出てきません)
逆にすごく良かった点は、「グラスホッパー」を読んだ時にも思ったが、戦闘シーンやボクシングなど、一挙手一投足が極めて重要な瞬間である場面を、まるで時間を引き延ばすようにして書くのは本当に上手いと思った。読んでいるだけで、まるでリングの床に付いたカメラの映像を見ているようだあったり、自分がボクサーになったかのような感覚を味わえるのは臨場感を謳うテレビのCMより実感が湧いてすごいなーって思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?