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【臨床栄養学】循環器疾患
病気は患ってからでは遅い。病気を患ってから、今までの食習慣や運動をしておけば良かったと後悔することになる。闘病生活が始まった後は通院と治療に時間とお金を割かれ、この病気は本当に治るのかと不安や心配にも襲われる。幸せの定義は人それぞれだとは思うが、その幸せな状態を達成するためには身体、精神、自由な時間、お金などが必要不可欠だ。病気になってしまうと、それらのリソースが問答無用で奪われてしまうためQOLが一気に下がってしまう。
こんなことは百も承知だとは思うが、病気を患っていない内はどうも現実味が湧かない。現実味が湧かないから食生活改善などの行動に繋がらない。ではどうしたら現実味を帯びるか。それは病気のことを知識として知っておくということが重要だと自分は考える。
この記事では臨床栄養学の教本を参考に、病気の概要とその症状、治療法についてまとめていきたい。自分の将来に起こり得る症状と、どんな治療法が待っているのか。それらを知っておくだけで日々健康的に過ごそうと思えるはずだ。
循環器疾患概要
循環器疾患とは心臓や脳血管などの血管が正常に働かなくなる疾患のことである。虚血性心疾患や脳血管疾患を含む循環器疾患は日本の主要な死因の一つである。急性期治療や後遺症治療のために個人的にも社会的にも経済的、精神的負担などは増大となる。
特に脳卒中は発症により、寝たきりの主要な要因の一つとなるほかADLの低下を招く。脂質異常症、糖尿病など循環器疾患のリスクとなる危険因子の治療、メタボリックシンドローム、生活習慣の改善、食事療法、運動療法、禁煙などにより死亡率増加やADL低下を予防することができる。
高血圧
・疾患の概要
安静時の動脈血圧が正常より高い状態を高血圧という。日本高血圧学会による成人における血圧の分類では収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を高血圧と判定している。
高血圧は①本態性高血圧②二次性高血圧③高齢者収縮期高血圧に分類される。
①本態性高血圧
高血圧の約90%と言われ原因不明で起こる。多くの遺伝因子が関与しており、遺伝因子以外に食塩の摂取量、ストレス、肥満、喫煙、アルコールの多飲、運動不足などの環境因子(生活習慣)が重なることで発症すると言われている。
②二次性高血圧
血圧を高くする原因が明らかなものをいう。腎性高血圧、内分泌性高血圧、腎血管性高血圧などがある。
③高齢者収縮期高血圧
高齢者では動脈硬化の進展による大血管の弾力性低下と反射波の増大が関与して、収縮期圧が上昇する。
・症状
血圧には心臓、腎臓、末梢血管が直接関与しており、高血圧が長期にわたると血管内皮機能障害、血管平滑筋の肥大や繊維化、血管内腔の狭窄や閉塞、血管破裂による出血などが起こり、心臓、脳、腎臓、大動脈の障害が生じやすくなる。
・治療
治療法としてはまず生活習慣の修正を行うが、生活習慣の修正のみで目標血圧を達成できる患者は少なく、大部分の患者には薬物療法が必要になってくる。
生活習慣の是正としては下記が挙げられる。
①ナトリウムの摂取量を少なくする
②腎不全などの障害がなければカリウム、カルシウム、マグネシウムを十分摂取する
③肥満の場合、摂取エネルギー量を少なくする
④禁酒もしくはアルコール摂取量を少なくする
⑤食物繊維を十分に摂取する
⑥適度な運動を行う(ウォーキングであれば週に70,000歩ほど)
⑦禁煙する
動脈硬化症
・疾患の概要
動脈硬化症とは動脈壁が弾力性を失い硬くなった状態である。
病理学的には粥状硬化、中膜硬化、再動脈硬化に分類されるが、一般的に動脈硬化とは粥状硬化を指す。
・症状
動脈硬化症の成因は不明であるが粥状硬化は幼児期より始まり、多数の因子が複合的に作用して加齢とともに進行する。内臓脂肪蓄積型肥満に糖尿病、高血圧、脂質異常症などの危険因子が重なり起きる状態をメタボリックシンドロームと呼び、動脈硬化症から心筋梗塞、脳梗塞などの発症率が高くなると言われている。
・治療
治療としては臨床において動脈硬化の退縮を十分に期待できる方法はない。治療の主体は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など動脈硬化危険因子となる生活習慣の改善や、抗血小板薬、抗凝固薬による血栓の予防である。
狭心症、心筋梗塞
・疾患の概要
狭心症は、心筋の一過性虚血によって起こる胸痛を主な症状とする症候群である。
心筋梗塞は、虚血が一定期間持続したため親近の一部が壊死に陥った状態である。
狭心症と心筋梗塞を合わせて虚血性心疾患と呼んでいる。
・症状
狭心症の原因には心筋酸素需要の過剰と心筋酸素供給の不足がある。多くの場合は動脈硬化症に基づく冠動脈狭窄、攣縮、血栓のいずれか、または複数が関連して存在する。
狭心症には労作時に血圧と心拍数の増加に伴い酸素需要が増大するために酸素不足になる労作性狭心症、運動をしなくても酸素供給の不足により胸痛が起こり、血栓を失うことが多い安静時狭心症、早期安静時や早期運動時に起こりやすく冠血流が激減するために強い虚血を生じる冠攣縮性狭心症などがある。
・治療
狭心症発作時にはニトログリセリンなどの硝酸薬の投与により痛みを止めることができるが、心筋梗塞の場合はモルヒネの投与により痛みを鎮める。他の治療法としては、経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術が行われる。
心不全
・疾患の概要
心不全とは心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、生命を縮める病気である。心不全は心腔内に血液を充満させ、それを駆出するという心臓の主機能の何らかの障害が生じた結果出現するため、心外膜や心筋、心内膜疾患、大動脈疾患、不整脈など、さまざまな要因により引き起こされるものである。
・症状
左心不全では肺鬱血と心拍出量減少が起こり、肺の拡散障害と拘束性障害、末梢の循環障害を生じ、呼吸困難、チアノーゼなどをきたす。右心不全は右心系に戻れない血液が全身に鬱血し、肝臓の肥大や消化器粘膜の浮腫を生じる。
・治療
治療目標は心不全の程度や症状の進行具合などにより症状のコントロール、入院予防、死亡回避、緩和ケアなど個々により異なるが1番は現状より進行を抑制させることである。基本的には運動療法と食事療法で生活習慣の改善を試みつつ、薬物療法という形になる。
脳卒中
・疾患の概要
脳血管障害には①脳出血②脳梗塞③くも膜下出血があり、それらを総称して脳卒中と呼んでいる。
①脳出血
脳の中の細い動脈が破れて脳の中に出血し、溢れ出た血液が神経細胞を障害することで症状が出現する。細い血管が主に高血圧に由来する動脈硬化で痛み、破綻して起こる。
②脳梗塞
脳梗塞は血管が詰まることでその先の脳細胞に血流が行き渡らなくなり、酸素や栄養分を送ることができず脳の機能に障害が生じる病体であり、脳卒中の過半を占める病型である。
③くも膜下出血
脳動脈の破れにより症状が出現し、破れる欠陥は脳の表面を走る主幹脳動脈で、脳の表面を覆うくも膜という薄い膜の内側に出血する。くも膜下出血は脳卒中の中では死亡率が高い。
・症状
脳の循環障害に伴い意識障害、運動機能障害、知覚障害、言語障害を合併する。脳卒中発症の兆候として、一過性脳虚血発作が知られ、症状は短期間で消えてしまうため軽く考えらているが、放置すると約2割の方は数年以内に脳梗塞になると言われている。
・治療
脳卒中の急性期では脳の損傷を防ぎ、回復させることを目標に患者の気道確保、呼吸と循環動体の確保の救急蘇生を開始し、高血糖または低血糖を補正する。
病態が安定してからは動脈硬化を促進させる高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満など生活習慣病の改善を行う。