京都が生んだ、やさしい奇跡~「八月の御所グラウンド」~
帯文に「京都が生んだ、やさしい奇跡」「じんわり優しく、少し切ない」とありましたが、まさしくそのとおり。京都で大学時代を過ごしたこともあり(市内でなくて山科ですが)、懐かしく、読後ほろりとしました。
☆八月の御所グラウンド 万城目学著 文藝春秋 1760円(税込み)
第170回直木賞受賞作品
万城目さんの作品は、「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」も映画を先に観て、原作本として読みました。今回、映像化される前に読んだので、かえって感動大きかったかもです。
表題作の「八月の御所グラウンド」の他に「十二月の都大路上下ル」を収録してますが、断然、「八月の御所グラウンド」の方が好きです。
ネタバレになってしまうと面白くないので、レビュー難しいのですが、主人公朽木くん、欲がないようなひょうひょうとした青年で、友人多聞くんのために、早朝の草野球に加わることになります。スマホがでてくるので、最近のことのようですが、多聞くんの理系の就職の仕方は、わたしたちのころと変わらずです。卒論を仕上げないと卒業できないところ。理系は研究室の教授の力が大きいところなど。
そして、朽木くんが中国人の友人シャオさんと行くお店が「セカンドハウス」。わたしが学生のころからあったので、懐かしかったです。京都大学であった軟式庭球部の学生選手権の試合の帰り、わたしたちのキャプテンが京都出身で博識な女性だったこともあり、「セカンドハウス」など京都の名店に連れていってくれました。京都の街、出町柳界隈は、わたしにとって、学生時代を過ごしたエリアの一部なので、その描写に郷愁でした。キャロットケーキも。
出てくる人物が憎めない愛らしい人ばかりで、特に「アイヤー」と発する中国人の女ともだちシャオさん。えーちゃん、遠藤くん、山下くん、三福教授・・・。
この言葉に凝縮されている青春の境遇と野球への愛着。
ラストの場面が、佛教大学近くの建勲神社というのも、最近、バスでそのあたりを通っていたので、親近感でした。セピア色した映像が幾度も浮かんできそうな、じんわりと温かな、それでいて切なさあふれる作品でした。
かなこさんが素敵なレビュー書かれていました。
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