わたしの本棚43夜~「こころ」
最近の本を紹介してきましたが、少し、何度も読み返している好きな本や亡くなった方の本、思い出の本も書いていこうと思います。怠け者で、3日で終わるかな、と思っていましたが、なんとか楽しみながら、43日まできました。読んでいただきありがとうございます。
☆「こころ」夏目漱石著 新潮社文庫 324円+税
夏目漱石の小説のなかで一番好きです。「坊ちゃん」や「それから」とかもいいですが、やはり、「こころ」のせつなさ、痛いぐらいの壊れやすい感受性に涙しました。初めて読んだ高校生のときより、大人になって、結婚してから読んだときの方が心に沁みました。値段は平成8年の127刷のときのものです。
上(先生と私)、中(両親と私)、下(先生と遺書)の三部作です。親友(K)を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも自死するという先生。学生(わたし)の、眼から先生を間接的に描く前半。先生の独白になる後半。先生は遺書の中で、自殺の理由を「明治の精神」への殉死であると述べています。先生は過去に叔父に裏切られ、父の遺産を横領されたという経験をもっています。他人の欲しがるものにこそ価値があるとする近代資本主義的な欲望に負け、親友のKを裏切ります。先生は自分のなかにあった「明治の精神」が、徐々に新しい考え方に感化されていることを感じ、乃木大将の自死ともあいまって・・・。