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小説の箱・1月~高樹のぶ子「伊勢物語 在原業平 恋と誠」
あけましておめでとうございます。
学生のころから好きな作家のひとりが高樹のぶ子さんでした。高樹のぶ子さんの著作のなかで一番すきなのは、わたしの本棚44夜でも書いた「その細き道」です。今回は、2020年に出版され、話題になった「小説伊勢物語 業平」(日本経済新聞2019年夕刊連載)と、その副読本である「伊勢物語、在原業平 愛と誠」を中心として。泉鏡花文学賞(第48回)毎日芸術賞(第62回)受賞作品。
☆「小説伊勢物語 業平」 高樹のぶ子著 日経BP 2200円
☆「伊勢物語 在原業平 恋と誠」 高樹のぶ子著 日経BP 850円
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「小説伊勢物語 業平」は、去年、自分へのご褒美に買って、冬休みに読んでみましたが、読み応えありました。和歌中心の伊勢物語を現代語訳でなくて、32の小説に仕立てています。副読本の「伊勢物語 在原業平 愛と誠」はエッセイ風でもあるので、小説の人物が的確に描かれていて、さらに面白かったです。むしろ作者の登場人物に対する分析、思い入れがわかりました。
なかでも女性の生き方として、藤原高子、やす子内親王の業平との恋愛は考えさせられました。宿命を受け入れ、自分なりの恋愛をする在り方、たった一夜の思い出を生涯思い続けそれ以上を望まないという姿勢も、時代といえばそうなのですが、雅を感じて余韻残りました。
そして、平安時代といえども、変わらないのは、人が人を想う心や人間としての魅力は、普遍なのだなあ、と思いました。時代が変わっても普遍なものがあるからこそ、古典から学ぶことはたくさんあると思いました。
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在原業平といえば、プレイボーイかとおもいきや、読んでいくと、受け身の人間であることもわかります。いろんな女性たちと出会いますが、基本的に受け身であり、源氏物語の源典侍のような年の離れた女性とも仲良くしたり、(九十九髪の女)、男たちと垣根を超えた付き合いをしたり。権力争いからも距離を置き、和歌の世界に生きたこと、そして嫌みがない人だなあ、と思いました。また業平は、当時、男性貴族の教養だった漢詩が苦手で、それゆえ、ひらがな文学の和歌に傾倒したという解釈には、得手不得手はそれぞれで、得意な好きな分野で生きたからこそだったんだなあ、と。
この本を読めて、時空を超えてその世界の余韻をいただけました。歌がすぐにはわからなくても、現代語訳が小説の中に書かれていたり、小説の前後の場面から想像しやすかったです。そして、何時の時代でも普遍的なもの、出自の悩み、損得で判断しない情動からえた無常、思うに任せぬ恋、気持ちをあらわす言葉探し、をしている姿が活写されているので、懸命に生きた業平という人間を身近に思うことができました。小説のなかでの業平や女性たちの行動が、今の時代においてもヒントや答えになることも。幾千年の歳月を経ても、伊勢物語の登場人物たちの言動から学べる、学びたいと思いました。