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人を思いやる心・パストライブス/再会

 今年の話題作「オッペンハイマー」も「哀れなるものたち」も「デユーン・砂の砂漠2」も壮大で、ハリウッド的で、素晴らしい作品と思うものの、今回のアカデミー賞候補作のなか、「パストライブス・再会」は繊細で人が人を思う心の切なさが見事に描かれており、感心し、もっとも好きな作品でした。

パストライブス・再会 セリーヌ・ソン監督 米韓映画

 物語は12歳、24歳、36歳でのノラとヘソンの物語を軸に進んでいきます。

登場人物

 ノラ(グレタ・リー)・・・映画監督の父親、画家の母親の元に生まれ、12歳のとき、韓国からカナダに移住する。のちに、アーサーと結婚してからは、グリーンカードを取得し、ニューヨークに在住して作家活動。

ヘソン(ュ・テオ)・・・韓国で生まれ、韓国で育つ。36歳の今も両親と住む。工学系の大学を出て、企業で働く。

アーサー(ジョン・マガロ)・・・ノラの夫であり、作家。

あらすじ

 12歳のとき、お互いに恋心を抱きながら、ノラのカナダ移住を機に、ヘソンとノラは離れ離れに。24歳のとき、フェイスブックでノラの父親と繋がったヘソンがノラともスカイプで繋がるがやがて別れ。そして、36歳のとき、ノラはアーサーと結婚していましたが、恋人と別れたヘソンはノラに会いにニューヨークへ。7日間の滞在でのふたりの、相手を思う気持ち、過去の思い出、揺れる心がニューヨークの旅情と韓国の言葉「イニョン(縁)」をバックに見事に描かれています。

感想

 友人が行間を読む作品と称していましたが、多くは語らないですが、100分という長さで、余韻溢れる展開でした。3人の登場人物、3人とも魅力的ですが、とりわけ、ノラはチャーミングです。ヘソンが、愉快な人と称し、兵役中も思い続けたのがわかります。
 一方のヘソンはノラが典型的な韓国男子と称するほど、真面目で、朝食のパンくずを綺麗にお皿に返すシーンなどから几帳面さも。アーサーは、見事な大人で、ヘソンを好ましく思わないはずなのに、丁寧におもてなし、ラストは家の外でノラを待っているという愛の深さ。
 3人とも、相手を尊重する言動があって、それでいて、本当は苦しんでいることが垣間見れ、例えばノラの最後の号泣、ヘソンのハグ、アーサーの「ノラの寝言はいつも韓国語だ」とうなだれるシーンなどは、こちらまでせつなくなりました。
 「イ二ヨン(縁)」という言葉が紡ぐ、3人の生き方が交差して、時間は流れます。
 ニューヨークでメリーゴーランドの前で過去を思い出すノラとヘソン。
 メリーゴーランドは左回り(時計と反対まわり)で過去へ帰っていく経過をあらわしているといった細かな演出も心地良かったです。
 イニョン(縁)をモチーフにして東洋的かもしれないけれど、人と人との繋がりのせつなさを教えてくれるこの作品。派手さはないものの、とても素敵な作品でした。

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