わたしの本棚158夜~「映画宣伝おばちゃん」
男性中心だった映画業界で、松井寛子さん(通称かんこさん)がなしてきた仕事。35年で600本の映画宣伝に関わり、監督、スタッフを励まし、映画のヒットにつなげてきました。今回、映画に係わる書籍を制作・刊行する零号出版が、宣伝という仕事で映画業界を支えている松井寛子さんの本を出版してくれました。厳しい出版業界の不況状況の中、クラウドファンテイングによって。
https://camp-fire.jp/projects/532971/activities/354665
☆映画宣伝おばちゃん 松井寛子著 零号出版 2727円+税
かんこさんの生い立ちから、仕事の内容、交友関係までかなりセキララに飾らない言葉で綴らています。会社帰りの「珈琲座」で出会った玉ちゃんと同棲し、子どもを産み、豊中の「ぼちぼち」という喫茶店で夫婦や仲間と働き、やがて社会運動、文化人たちとの出会い。玉ちゃん失踪後、絶望の中、女ともだちたちと一膳飯屋「もりもり」を経営。今でいうシスターフッドのような感じだったのでしょうか。どうやって生きていこうか、と自分で稼ぐ経済的に自立した女性へと変身します。愛する前田監督との出会い。
かんこさん自身、「人によって変えられた」というように、出合いによって変わっていくかんこさん。前田監督が脳梗塞で倒れ、リハビリが必要になってから、職場の二階に住ませて、彼の死まで献身する話は、東京の愛人とのバトルも含めて、ドラマのようです。一生懸命さに、人を思う熱い行動力に圧倒されます。
今、活躍されている映画業界の人たちの応援コメントだけでも幅広い交流や支持を物語っていますが、前田勝弘、松本雄吉(維新派)、若松孝二・・といった故人となった個性あふれる人たちとの出会い。そんな体験を基に、作品制作、公開の舞台裏の話を盛り込みつつ、話はすすみます。巻末には、2006年から2022年までのかんこさんが映画宣伝に関わった作品一覧が応援コメント一覧とともに載っています。「映画」に関わる人の仕事は多岐にわたり、埋もれている言葉を魅力的な人物を知らせたいという出版社の思い、その第一号として、ぴったりの人物かんこさんの物語です。読み終わって、また映画が恋しくなる本でした。
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