わたしの本棚114夜~「ZOOMに背を向けた大学教授・コロナ禍のオンライン授業」
2020年に日本大学芸術学部文芸学科でおこなわれたZOOMに背をむけたオンライン授業を書籍化したものです。帯には、「本日は都合により、ここまで。パソコンの不具合、発生。私に出来ることはメールの送受信と、文字だけの原稿作成」とあります。本文では、学科助手に聞くと「余計なことは考えないで、ただ手順どおりに進めればできます」とのことで、とにかく授業内容と課題をどのようにしてクラスルームに送信するかを考えた、とあります。団塊の世代が直面したパンデミック。パソコン操作に四苦八苦、変換ミスを繰り返し、ついには心労のため強制入院。そんな一年間の講義記録の書籍化です。担当編集者さんの、書籍化までの経緯です。
☆ZOOMに背を向けた大学教授~コロナ禍のオンライン授業~村上玄一著 幻戯書房 2400円+税
2021年3月で大学教員を引退するまでの33年間、村上氏にとって、最後の1年が対面授業でなくZOOMに背をむけたオンラインによる授業であったことは、逆にその年の全記録を書籍として残す形となりました。仮名で生徒さんがでてきており、課題に対する生徒それぞれの文章も載っており、です、ます調の優しい語り口で、すらすら読めます。
出版文化論
文芸研究Ⅰ(一年ゼミ)
文芸研究Ⅱ(二年ゼミ)
文芸研究Ⅳ(四年ゼミ)
ジャーナリズム実習Ⅲ
それぞれの2020年前期・後期の講義録です。一年ゼミでは、掌小説の習作があり、「雨が止むとき」「江古田のパン屋さん」「姉の離婚」などの課題で書いていきます。二年ゼミでは三島由紀夫、野坂昭如を学び、四年ゼミでは卒論へ向けてです。小説に大切なのは、「テーマと描写力」とのは話には、編集者ならではの視線もありました。コロナ禍で自問した大学の意義。コロナ禍でZOOMに背をむけた授業(オンライン授業)でなければ、書籍として講義が残ることがなかったかもしれないと思うと、一般の人が知ることができなかったかもと思うと、不思議なめぐりあわせを感じ、役立つことも多く、学生になった気分で楽しく読みました。
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